多様で小回りの利く分散型社会へ
浜さんを訪ねたのは東日本大震災からひと月後のこと。グローバル資本主義と貧困問題を中心に、震災と日本経済の立て直しについてエコノミストに聞く絶好の機会になった。
高度経済とバブル経済の崩壊、リーマン・ショックなどの波を経験後、未曽有の震災・原発事故に遭った日本には、経済モデルがない、と浜さんは言う。成長経済志向から成熟経済へ転換すべき時に起きてしまった震災。「地震前と同じ状態に戻る再建プランではなく、また今までの均一的で巨大化志向の一極集中社会でなく、多様で小振りで小回りが利き、分散型である経済社会の姿を求める教訓だと受け止めるべき」と言う。
「均一化巨大化した社会の中で、雇用も非正規化や弱者切り捨てという問題が出てきたわけです。それを多様で分散した社会に変え、独自の地域共同体の中で新しい雇用を作っていくようにするべきです。弱きもの・小さきものが踏みにじられていく社会を是正しなければ」
震災直後の物不足だった時、大規模流通ルートから消えたトイレットペーパーなどが、すっかり忘れ去られていたような町の小さな商店で売られていたのを見て、「いざとなれば頼るのはローカルよね」と言っていた母の言葉を思い出したという。
地域共同体の土台を安定させ、中小の企業や商店にも独自のルートを確保することが行政の役割だ。復興支援も同じと言う。大手自動車会社など大企業ばかりに金が回るのでなく、地域でシナリオを書き、必要なところへ必要な金が渡るように計画すべきと説く。「民主党が政権を取った当初、『コンクリートから人へ』『人間のための経済』と言っていたことは正しかったのに、その時だけだったのでしょうか」
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はま のりこ
1952年、東京都生まれ。三菱総合研究所入社後、ロンドン駐在員事務所所長を経て2002年秋から同志社大学大学院教員。市民の視点で経済を分析する。著書は『新しい経済学 グローバル市民主義の薦め』など多数。