性的マイノリティの一つで、他者と親密な関係性を築く等するときに性別を問わないパンセクシュアル。バイセクシュアルと被るところもあるが、いずれにしてもLGBTの中では「脚注」「補足」扱い。本書はLGBTのどの境遇も経験し、今はパンセク当事者である著者が、自身の経験、当事者対談等を通じてパンセクの全貌を詳らかにし、存在を高らかに宣言する。
パンセクが問うものは、性別二元論と、人は一つの性別だけに惹かれるはずだという「モノセクシュアル規範」(合わせてモノセクシズム)。そこに性愛規範やモノガミー規範等が合わさり、異性愛者とも同性愛者とも違う経験なのに双方から排除される。パン/バイセクの人は孤立し、女性は性暴力被害割合も高いという。また著者がパンセクと名乗るのは、「好き」の質が様々に違うことによるとも。
当事者の拠り所になると共に、可視化されていない強固な規範をあぶり出す。革命的な何か、を本書が引き起こすだろう。(R)
石とザアタルの地 パレスチナ文学アンソロジー
山本薫 編 岡真理、田浪亜央江ほか 訳
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- 石とザアタルの地 パレスチナ文学アンソロジー
- 山本薫 編 岡真理、田浪亜央江ほか 訳
- 皓星社 2700円+10%
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破壊や殺戮が続く中の歴史や生活史を表現豊かに紡ぎ、次の世代に残そうとする、ガッサン・カナファーニーやリヤーナ・バドルほかパレスチナ人8人(うち5人が女性)の詩と小説が並ぶ。身を鋭く突き刺す筆致や封鎖された街中で営まれるささやかな暮らしを語るものまで、多様な世界に引き込まれる。
「種子は土の中に苦労して道を開かなければ陽の光を見ることができない」と、書いていた女性詩人の静かな決意。壁に貼った写真の、梟の眼光から立ち上がる「何者も恐れぬ、あの挑むような意志」に見られる恐怖と畏怖。“簒奪者の肉を喰ってやる。俺の飢えに気を付けろ”という、心の底からの怒り。イスラエル内に住むパレスチナ人の葛藤と過酷な現実も沁みる。“亡骸となった子どもを集めてできる限り洗い布に包み、生きている子どもを集めて体を洗い祈ってあげて髪を撫でる”、女たちの抵抗の姿。
怒りは鋭い怒りとして、絶望の中に諧謔さえ紡ぐ、パレスチナ文学の世界を読んでほしい。(み)
潮目を生きる 原発から海を守る祝島の住民
山秋真 著
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- 潮目を生きる 原発から海を守る祝島の住民
- 山秋真 著
- 而立書房2000円+10%
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本紙読者なら、ひじきやビワ茶を通して山口県の祝島を知り、その運動を支援している人も少なくないだろう。祝島の人々は、「みんなのものである海を売ることはできない」と、40年以上にわたって中国電力上関原発の建設反対運動を続けてきた。1300回を超えた毎週のデモを続けるなど、暮らしに根付いた運動のなんと粘り強いことか。著者は長く石川県珠洲や祝島の原発反対運動を取材してきたジャーナリストで、本書はwanでの連載をまとめたものだ。
集会の炊き出しに、アオサ汁や握り飯、釜揚げひじきにビワ茶が並ぶ様子や、月に2回の大潮の日を待つ海の暮らしが目の前に浮かぶ。潮の引いた干潟でひじきを刈り、大釜で炊く。そんな豊かな景色の一方で、この40年以上、原発のことが頭の片隅から離れない暮らしを島の人々に中国電力は強いている。
この理不尽をなんとしよう。運動の現場や、海と人の営みが動画で見られるQRコード付。(公)