WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

私の東京地図

佐多稲子 著

  • 私の東京地図
    • 佐多稲子 著
    • 筑摩書房900円+10%
     ふぇみん創立者の一人、佐多が終戦直後に発表した自伝的短篇集の増補版。焼け野原となって地形がむき出しになった東京の町を見ながら記憶の地図をたどる「私」。少女時代を過ごしメリヤス工場に通った向島、料理屋の住み込み女中となった上野池之端、丸善の店員時代に暮らした牛込神楽坂、最初の結婚で間借りした下目黒、夫と別れてカフェーの女給になった駒込神明町、2度目の結婚で引っ越しを重ねた根岸、鶯谷、十条…。  更地になると元あった建物を思い出すのは難しいのに、かつてあった東京の表通りを実際に歩き路地裏に入りこんでいくような気持ちになる。男女の機微を描く筆も冴える。「私にはただ、男と女のいとなみが悲しく、不思議なものにおもわれる」といいながら様々な男女や夫婦を、そして自分の2度の結婚生活を冷静そのものに描写する。痛々しくて滑稽で、思わずうなる。  早世した叔父や芥川龍之介、小林多喜二を偲ぶ文章には哀惜が満ちて、心に残る。(雪)

    フェミニズムを学ぶ人のために

    申琪榮、青山薫 編

    • フェミニズムを学ぶ人のために
    • 申琪榮、青山薫 編
    • 世界思想社3000円+10%
     フェミニズムは研究するものでなく、実践するものと言う人もいる。だがそもそもフェミニズムとは「実践と知の両輪からなる」。本書は初学者に向けたシリーズだが、フェミニズムの革新性と先端性を詳らかにしたもので、だいぶ昔にフェミニズムに出会った人にも最近出会った人にも、学び直し・学び落としに最適な一冊だ。  テーマの広範性にも驚く。フェミニズムと表象・現象学・クィア・権力性、ケア、貧困、労働、セックスワーク…。「障害モデル」と「社会モデル」を超えて障害のある身体性を捉え直す「フェミニスト障害学」、表層的な「インターセクショナリティ」の流行と日本のフェミニズムの中のレイシズムや植民地主義、沖縄フェミニズムが照射するもの。安全保障やAIの課題にフェミニズムがこれまでいかに介入し今後も介入するのか…。  最先端の議論と共に限界や課題も示す。「社会構造を読み解く視力」は絶えず更新が必要だ。活動現場にも生かせる。(T)

    階級と「私たち」のゆくえ イギリス映画が照らす連帯の物語

    河野真太郎 著

    • 階級と「私たち」のゆくえ イギリス映画が照らす連帯の物語
    • 河野真太郎 著
    • フィルムアート社2600円+10%
     イギリスの階級という概念、貴族階級と労働者階級には異なる文化があり、それぞれが己を誇りにしてきたこと、その階級が変化してきたさまを、彼の国の文学やケン・ローチ監督らの映画を題材にわかりやすく説く。サッチャー政権に始まる国鉄や炭鉱の私営化(民営化ではなく)、小さな政府への転換による福祉政策の後退、人々の連帯の分断は、まさに新自由主義の台頭によるものだ。新たに出現したのは貧困社会である。  世界的な格差の広がりが人々の分断を進めているが、格差が個人間の問題であるのに対し、階級は社会構造の問題である。格差という言葉を用いる裏に、貧困を単に“勝ち組と負け組”の競争原理とか自己責任に収れんしようとする意図が透けて見えよう。イギリスの事例は現代日本においても進行中だ。本書は、そうした分断と個人主義の落とし穴を指摘し、いかにして共同体、言い換えれば「私たち」の社会を再生するかを論ずるものである。(た)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
    このページのTOPへ