私の愛するロシア プーチン政権から忘れ去られた人びと
エレーナ・コスチュチェンコ 著 高柳聡子 訳
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私の愛するロシア プーチン政権から忘れ去られた人びと
- エレーナ・コスチュチェンコ 著 高柳聡子 訳
- エトセトラブックス3000円+10%
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プーチン政権批判の急先鋒であった独立系新聞「ノーヴァヤ・ガゼーダ」(現在は国外で発刊)で17年間記者だったジャーナリストの著者(現在亡命中)による渾身のルポと、LGBT活動家でもある著者の半生の記録からなる。
著者は侵攻を重ねるプーチン体制が切り捨て、痛めつけた人たちが生きる現場に身を投じ、発した声と言葉を刻む。廃墟で暮らす貧困と暴力にまみれた子どもたち、モスクワ中心主義の中で捨て置かれた地方の自動車道で体を売る女性たち。障害者施設での性暴力と強制不妊手術、少数民族や性的マイノリティーへのヘイトや迫害、対テロ犯攻撃で特殊機動隊員に子どもを殺され、政権批判する母たちへの弾圧、侵攻や弾圧を正当化するメディア、人々の洗脳と無関心…。
戦争遂行のためにどれだけ社会の基盤と人心が荒廃するのか。日本への示唆に富むと同時に、見捨てられた存在を「言葉」で詳らかにした著者のように、言葉の力がまだあるのだと信じられる。(月)
彷徨 あなたが選ぶ赤い靴の冒険
インタン・パラマディタ 著 太田りべか 訳
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- 彷徨 あなたが選ぶ赤い靴の冒険
- インタン・パラマディタ 著 太田りべか 訳
- 春秋社4000円+10%
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著者はインドネシアでのフェミニズムや脱植民地化をめぐる活動をリードする作家で研究者。
人生で、あの時、別の道を選んでいたら?と思うことがあるだろう。本書は読者が主役となって冒険する小説である。各章末の選択肢から1つを選び指定されたページに飛ぶと続きが読めて、何度も来る選択のその後を楽しむことができる。
主人公はジャカルタで英語教師をしているが、毎日の生活にうんざりし、冒険したくてたまらない。悪魔からもらった赤い靴を履いた瞬間、ニューヨークでタクシーに乗って空港に向かっている自分に気付く。冒険、そして彷徨の始まりだ。そして彷徨して初めて、目に見えない「境界」を意識する。隣家との壁、国境、あるいは性別、性自認、国籍など。「良い女の子は天国行き、悪い女の子は彷徨する」という一節が繰り返し登場する。
「境界」を乗り越えるのか、彷徨を続けるのか、読者は選ぶ。人生すごろくみたいな本。(雪)
押し付けられる結婚 「官製婚活」とは何か
斉藤正美 著
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- 押し付けられる結婚 「官製婚活」とは何か
- 斉藤正美 著
- 新日本出版社1800円+10%
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本書は国や自治体が交付金や補助金などを使い行う結婚支援―「官製婚活」を分析。婚活支援事業にはマッチングアプリの運用、婚活パーティーやセミナー、ライフプラン教育、「性と健康に関する正しい知識」の普及を目指すプレコンセプションケアなどがある。
官製婚活は、第2次安倍政権以降、本格的に取り組まれたようだ。その前の2000年前後、右派による「ジェンダー・バックラッシュ」が起きた。連動するように、結婚して子どもを育てる家族を規範とする、右派国会・地方議員、宗教右派、日本会議などが「少子化対策」と称し、「産ませる」政策を推し進めた。官製婚活が怖いのは、自己決定権への言及がほぼなく、「リプロダクティブヘルス/ライツ」の概念を変容させ、「卵子が老化する」と脅し、妊娠適齢期を幼いうちから教える内容が多いことだ。宗教団体と近い保守政治家、婚活業界、産婦人科業界などの利権も絡む。優生思想にもつながる官製婚活は本当にヤバい。(よ)