WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

ポストフェミニズムの夢から醒めて

菊地夏野 著

  • ポストフェミニズムの夢から醒めて
    • 菊地夏野 著
    • 青土社2400円+10%
     #MeTooや「新しいフェミニズム」が浸透していると思う半面、反フェミニズム的な高市氏が女性初の首相ともてはやされ、排外主義や軍事主義、女の貧困が跋扈する今の状況がクリアに。鍵はポストフェミニズム(以下、PF)。1980年代以降の「フェミニズムは終わったと認識させる言説と社会状況」のこと。ガールズカルチャーや多様性がもてはやされ、選択とエンパワーメントの個人主義等が特徴だ。著者はドラマや漫画、慰安婦、AV新法等を題材に、PFがどう生まれ社会に浸食し、私たちはどうしたらいいかを詳らかにする。  PFの大きな要素が、2000年代以降のネオリベラリズム(新自由主義)。一部のエリート女性の成功が「フェミニズム」とされ、不公正な社会・経済構造を不問にした。「女性活躍推進法」は最たるもの。  必要なのは、ネオリベから脱却する99%のためのフェミニズム。社会・経済構造の変革のための団結・連帯。私たちが分断されないためにも本書を。(諍)

    リプロダクティブ・ジャスティス 交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史

    L・ロス、R・ソリンジャー 著 申琪榮ほか 監訳

    • リプロダクティブ・ジャスティス
    • L・ロス、R・ソリンジャー 著 申琪榮ほか 監訳
    • 人文書院3600円+10%
     性差別、人種差別、移民差別、階級格差…。交差する数多くの複雑な課題に、有色の人々を中心とする米国の女性たちがどのように取り組んできたかを鮮やかに読み解いている。中絶の是非のみに焦点を当てた議論を批判し、「産まない権利」だけでなく「産む権利」と「安全で健康な環境で子どもを育てる権利」も重要であることを強調する。根底にあるのは、社会を構成するすべての人の人権が達成されるべきだという信念である。  出発点は女性たち一人一人の「物語」だ。それが集合的な運動となり、全米各地で様々な課題に取り組む団体や社会運動を結びつけていく。白人至上主義や新自由主義に基づく分断を丁寧に批判し、連帯による社会変革を追求するさまを、本書は力強く描き出す。米国同様、様々な差別や分断が渦巻く日本における課題の分析や政策提言、運動構築に、本書は重要な示唆をもたらすことだろう。(林美子)

    水は動かず芹の中

    中島京子 著

    • 水は動かず芹の中
    • 中島京子 著
    • 新潮社1800円+10%
    歴史&フェミ小説『かたづの!』の著者による新作。スランプに焦る作家が、佐賀県の陶芸の里・唐津を旅するところから始まる。そして、知り合った陶芸家夫妻が語る水神(人と動物の境界を生きる水棲生物)の話に引きこまれ、「朝鮮出兵」にまつわる語りが作家と陶芸家夫妻のつながりを作っていく。  水神たちは「水神会議」を開いて、豊臣秀吉が画策する「朝鮮出兵」を止めようとする。朝鮮にルーツのある女性陶工がつくった「銀非(うんび)の茶碗」がカタカタと震え、戦の危機を水神たちに知らせる。夫に智恵を授ける武将の妻。朝鮮を足がかりにして明を我が物にしたい猿・秀吉とその家臣の思惑。面従腹背の家臣や、侵略を押しとどめようとする千利休や水神たちの行動。現代の政治に通じるのではないか。著者は、「明とよく関わるものが、天下人と呼ばれるものになる」と書く。  水神たちが川や海を縦横無尽に泳ぎ、行き来する世界観に惹かれる。(三)
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