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ふぇみんの書評

学校の「男性性」を問う 教室の「あたりまえ」をほぐす理論と実践

大江未知、虎岩朋加、前川直哉、教育科学研究会 編著

  • 学校の「男性性」を問う 教室の「あたりまえ」をほぐす理論と実践
    • 大江未知、虎岩朋加、前川直哉、教育科学研究会 編著
    • 旬報社1800円+10%
     日本のジェンダーギャップ指数の低さは、政治・経済分野が原因で、学校は「男女平等」と思われがち。学校教育に携わる人たちが、学校の「隠れたカリキュラム」とも言うべき「男性性」を詳らかにし、「ほぐす」ためのフェミニズム理論から実践までを記した。  大声で怒鳴る、にらむ、威圧する…DV判定の指標が教師の暴力にも援用できると前川。暴力は「指導力がある」と評価され、周囲も頼り、結果的に女性教員の軽視へ。また生徒の自主性を重んじる学校ほど、生徒間で既存の男性優位の権力構造が維持されるとの指摘に納得。それらに対する実践が読みどころだ。星野俊樹による「柔らかい声」を増やす声かけ、男子校の女性教諭による生徒が内面を言語化するまでの試行錯誤…さらに教員自身が内面化している「能力主義」について議論するのも特徴的だ。  すべては学校から、よりよい社会をつくるため。教員、保護者、生徒等、学校に関わる全ての人と共有したいと思った。(慶)

    大日本いじめ帝国 戦場・学校・銃後にはびこる暴力

    荻上チキ、栗原俊雄 著

    • 大日本いじめ帝国 戦場・学校・銃後にはびこる暴力
    • 荻上チキ、栗原俊雄 著
    • 中央公論新社1700円+10%
     ラジオパーソナリティで、いじめ問題に取り組むNPOの代表の荻上チキさんと、長年、戦争に関わる取材を続ける記者の栗原俊雄さんとの共著。荻上さんが戦時下のいじめ事例の収集と分析を行い、栗原さんが社会背景を解説している。「現代のいじめは悪化している」という言説への疑問も執筆の動機の一つのようだ。実際にあったかを証明することが難しいため、極端な事例は列挙せず、類似の証言が見られる事例に絞ったそうだが、凄まじいいじめの数々に読むのが苦しくなるほどだ。  疎開先でいじめられた都会の子、隣組・婦人会で「非国民」と排除された人々、日本人から差別的に暴力をふるわれた中国人・朝鮮人と、報復された日本人。同じ日本人から強姦されても問題にされない女性たち。軍隊以外にも陰惨ないじめと暴力がこれほどあったとは。戦後も現在にも引き継がれたいじめの本質を探り、戦争がある社会でいじめを引き起こす人々や構造の実相をえぐる。(う)

    刻印 満蒙開拓団、黒川村の女性たち

    松原文枝 著

    • 刻印 満蒙開拓団、黒川村の女性たち
    • 松原文枝 著
    • KADOKAWA1700円+10%
    戦争中、国の「満蒙開拓」政策で満洲に渡り、敗戦後現地に取り残された黒川村開拓団。団は、“生き残るため”に若い女性にソ連兵への「性接待」を強要した。その事実が、今夏ドキュメンタリー映画『黒川の女たち』として公開された。本書は監督である著者の製作の軌跡。  引き揚げ後、被害に遭った女性たちは村の中で「汚れた女」と烙印を押された。だが、「なかったことにしたくない」「後世に伝えたい」と強い意志を持ち続け、少しずつ語り始める。著者はその意志を知って、関係者を訪ね歩き、存命の女性たちや遺族の証言を丁寧に聞き取っていく。本書では、証言することに反対した人物の人間像も見えてきて、映画では断片的だった個々の人々の関係性への理解も深まる。女性たちが公に証言することへの葛藤も生々しく、ずっしりと重い。  女性たちばかりが犠牲になった「性接待」。その判断をした共同体のありようも、考え続けていかねばならない。(げ)
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