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ふぇみんの書評

沖縄 スパイ

キム・スム 著 孫知延 訳

  • 沖縄 スパイ
    • キム・スム 著 孫知延 訳
    • インパクト出版会3000円+10%
     沖縄諸島の久米島で、1945年8月15日前後の3カ月間に住民20人が日本軍守備隊に「スパイ」容疑で虐殺された。被害者には赤ん坊も含まれ、20人のうち7人は朝鮮人を夫とする一家。最後の1人になった「慰安婦」を描いた『ひとり』等で知られる、韓国の作家である著者は、沖縄の佐喜真美術館でこの事件を聞き、インスピレーションを得たと言う。  日本人、沖縄人、朝鮮人と幾重にも重なる、事件前からあった植民地主義的差別。そこに秘かに芽生えていた連帯や共感も、外から入ってきた「罪悪」=日本軍によるスパイ疑惑が壊し、島の人々を変えていく-。そこには「人間狩り」をした子どもも、その母もいる。  声を奪われた人たちに声を与え、今を照射する。命令を下す「木村総隊長」以外は、カタカナ表記で、動物の名前が多いのは普遍性を与えたか。「明確に被害・加害を分けるのは好きではない。明確な加害者は戦争」(来日時トーク)との著者の思いが貫かれている。(井)

    玩月洞(ワノルドン)の女たち  韓国の性売買サバイバーとともに歩んだ女性連帯の記録

    チョン・キョンスク 著 金富子 解説 中野宣子 訳

    • 玩月洞(ワノルドン)の女たち  韓国の性売買サバイバーとともに歩んだ女性連帯の記録
    • チョン・キョンスク 著 金富子 解説 中野宣子 訳
    • 現代人文社3000円+10%
    韓国・釜山の玩月洞は、朝鮮半島最初の遊郭と言われ、1980年代には東洋最大の性売買集結地に変貌。2001年の火災で性売買女性たち(オンニ)が逃げられずに亡くなった事件を契機に、著者は性売買で人権を蹂躙されたと訴えるオンニたちの支援団体「サルリム」を立ち上げた。  04年の「性売買防止法」成立後、オンニたちは生存権の保障を要求。サルリムはオンニたちの言葉に耳を傾け、店主や警察からの暴力に身体を張る。共にご飯を食べながら話し合い、社会からの烙印にもがくオンニたちを全面的に支持する姿勢を貫く。料理の才覚があったり、心の深い傷から攻撃的になるオンニたち。「前払金」無効を闘った日々。団体名に「性売買」の文字が入ることによる支障に抵抗する。新しい仕事や生活を求める紆余曲折にはハラハラする。  韓国の性売買事情や日本との関係を説く巻末の解説は必読だ。(三)

    メイ・モリス 父ウィリアム・モリスを支え、ヴィクトリア朝を生きた女性芸術家

    大澤麻衣 著

    • メイ・モリス 父ウィリアム・モリスを支え、ヴィクトリア朝を生きた女性芸術家
    • 大澤麻衣 著
    • 書肆侃侃房2300円+10%
     英・アーツアンドクラフツ運動のウィリアム・モリスの娘、メイ(1862-1938)の評伝。メイはすぐれた刺繍作家として23歳でモリス商会の刺繍部門責任者となり、父より優れた色彩感覚で美しい作品を残した。近年、メイや妹が残した日記や資料の研究が進んだおかげで、父の作品と思われたものの一部が実はメイのデザインだった、ということが判明している。  途中まで父と商会を陰で支えるのが自らの役割と割り切っていたメイだが、女性ゆえにデザインや工芸の協会から締め出された仲間とともに、1907年、「ウーマンズ・ギルド・オブ・アート」を設立、デザインや工芸の質を保つための女性アーティストの団体とした。  イギリス在住の版画家である著者が描くメイとその時代は、小説のように生き生きと面白い。女性参政権を求める運動が広まったこの時代、メイが求めたのは「経済的に平等な女性の権利」だった。「親の七光り」と「女のくせに」の両方と闘った一代記である。(雪)
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