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ふぇみんの書評

芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革

森崎めぐみ 著

  • 芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革
    • 森崎めぐみ 著
    • 岩波書店940円+10%
    一見華やかな芸能界だが、労働環境は劣悪。好きでやっているからと使い捨てにされていいわけはない!と、立ち上がった著者(本紙4月25日号3面)。俳優業の傍らとは言えないほど突き進んだ行動が、芸能界を変えていく。  だが働く場を改善したくても国に訴える根拠がない。ルール作りのためには現状を知るべきと、アンケートを行った。死亡事故の発生や、ロケ現場にトイレがないなど、壮絶な回答が。労災保険やハラスメント防止措置は絶対に必要、コロナ禍で自死が増化、という声に著者は奮い立つ。アンケート結果を発表し、2020年に「芸能従事者」の労災特別加入制度を認めさせ、加入者の範囲も広がった。「やっと安心して仕事ができる」との声、今まで苦労した人に遅くなったと詫びたいという著者…。  24年のフリーランス法は労災保険適用と車の両輪だ。働く場に勧告ができる産業医の必要性も説く。道はまだ長い。この行動は多くの人と共有されるべき。(三)

    私が選ぶ 高齢期のすまい活

    近山恵子、櫛引順子、佐々木敏子 著

    • 私が選ぶ 高齢期のすまい活
    • 近山恵子、櫛引順子、佐々木敏子 著
    • 彩流社2200円+10%
    自分が今をどう生き、今後どう最期まで生ききりたいのかを痛切に考えさせられた。本紙2022年8月15日号でも紹介した、栃木県にある多世代共生型コミュニティ「那須まちづくり広場」。自立の人向けサービス付き高齢者住宅、要介護者向けサ高住、多世代型賃貸、看取り用終末期住宅のほか、「100年コミュニティー」を謳い、地域の人も集えるデイサービス、食堂、音楽ホール、パン屋、24時間定期巡回・臨時対応型訪問介護看護事業所や移動サービスも。本書は、「広場」を立ち上げたリブ世代の3人が、これまでの理念と実践を語る。  「高齢期の選択」は「いのちの選択」。福祉の基本は、住宅と移動。「退院後の一人暮らしは無理か」「ケアマネや子ども都合では?」と投げかけ、“常識”が覆る。自分らしく、文化的に生ききるための「まちづくり」こそ必要とも。入居した人たちの人生と選択も語られ、高齢期はまさに人生の「完成期」。まずは「生活設計」と課題の洗い出しから。若いうちがいいらしい。(珞)

    美しい人 佐多稲子の昭和

    佐久間文子 著

    • 美しい人 佐多稲子の昭和
    • 佐久間文子 著
    • 芸術新聞社3000円+10%
     佐多稲子(1904~98年)の作家としての活動期間は長い。最初の作品「キャラメル工場から」を発表したのが28年、最後の随筆集『あとや先き』が93年。65年の長きにわたる。プロレタリア作家として分類されるが、その狭いジャンルにとどまらない優れた現代作家である。  本書は起伏の激しい佐多の人生を、文芸ジャーナリストの著者が丁寧なリサーチをもとに綴る。幼くして母を亡くし、小学5年生から工場で働く。20歳で結婚、自殺未遂、作家デビュー、再婚、革命運動、逮捕・拘留。戦争責任を問われ、離婚し、「婦人民主クラブ」(現ふぇみん)発起人の一人となる。  佐多は美しい人だった。本書から、何度も挫折しながらそのつど立ち上がり、転ぶたびに内省を深めて歩幅を確かめ、自分の傷を核にして作品をふくらませ、自分で自分の顔を作り上げていった佐多の姿が浮かびあがる。同士であり恩人でもある中野重治とのエピソードが印象深い。(晶)
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