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ふぇみんの書評

ポッタリ(風呂敷包)ひとつで海を越えて 在日コリアンの生活誌

小泉和子 編著

  • ポッタリ(風呂敷包)ひとつで海を越えて 在日コリアンの生活誌
    • 小泉和子 編著
    • 合同出版2800円+10%
     貴重な記録だ。日本による植民地支配下の朝鮮半島から「強制」や「徴用」、あるいは職を求め、また家族に連れられ日本に来た朝鮮の人々とその子孫。本書は、支配と差別・偏見の中で、在日の人々はどう暮らしたのかを取り上げた「昭和のくらし博物館」の企画展の図録を補筆改定したもの。聞き取りや膨大な資料から在日の生活を掘り起こしている。  戦時に在日の人々を統制下におくための「協和会」という組織を全国に設置し、民族的な文化を抹殺・弾圧した日本政府。和食や和服なども強制される中で、在日の人々は様々に工夫しながら自分たちの文化を守り、発展させた。焼き肉などの食文化は日本に根付いているし、電気敷布や電気カーペットは「オンドル」(床下暖房)機能から生まれたようだ。衣食住だけでなく出産や冠婚葬祭、教育、音楽や演劇などの娯楽まで、在日の人々が育んだ豊かな文化が身近に在ることに喜びを感じる。社会全体で共有したい大事な歴史だ。(ぱ)

    オタク文化とフェミニズム

     田中東子 著

    • オタク文化とフェミニズム
    • 田中東子 著
    • 青土社2200円+10%
    「オタク」は、かつては「男性オタク」のことだったが、今や「推し活」をする「女オタク」の活動が経済と消費の中心になるほどになった。本書は「女性オタク文化」と社会について、女オタクであり社会学者である筆者が分析、批評を試みる「極めて一人称的な本」だ。  女性の晩婚化と可処分所得の増加を背景に、「推し活」はその経済効果の大きさから、あらゆる分野で持ち上げられている。人間関係の構築等いい面もあるが、モヤモヤもたくさんだ。「推し」に時間とお金と労働を投資し、それらが企業のマーケティングに利用され、「公共圏」への関与の時間が減ること、推しを愛でる行為と異性愛規範強化、推しの商品化と24時間365日の劣悪低賃金な労働…。それらを社会学理論を駆使して詳らかにするのだが、著者は決して批判して終わらない。当事者としての限りないオタク文化への愛から、そこから議論を深めようと呼びかける。公正な「オタク文化」構築は可能なのか。挑戦の書だ。(明)

    真実と修復 暴力被害者にとっての謝罪・補償・再発防止策

    ジュディス・L・ハーマン 著 阿部大樹 訳

    • 真実と修復 暴力被害者にとっての謝罪・補償・再発防止策
    • ジュディス・L・ハーマン 著 阿部大樹 訳
    • みすず書房3400円+10%
     著者は性暴力被害者などのトラウマ治療を行ってきた米国の精神科医。前著の『心的外傷と回復』発表後、被害者の回復のために、被害者にとっての「正義」が認められるにはどうすべきかと、サバイバーの声も聞きつつ、本書を編んだ。米国の事例だが、普遍的だ。  「正義」を阻むのは、家父長制を根底にした(近親姦等)加害者の免責や、司法(警察や裁判所)・組織(キリスト教会等)・コミュニティ内の権力を使ったもみ消しのほか、被害を傍観した者(家族等)の罪も大きいと断言する。加害者による「謝罪」、損なわれたもの(心身)を修復させる「補償」と、再発防止策の事例が紹介される。  興味深いのは、特定の分野(例えば映画界)で一定程度女性の進出が進むと、性暴力加害者の“大掃除”が始まるという指摘。女性や被害者への偏見を打ち砕くシスターフッドや安全な共同体を求める意志が、社会を変える原動力だ。著者のフェミニストとしての言葉と指摘は、確信に満ちている。(三)
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