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ふぇみんの書評

なぜガザなのか パレスチナの分断、孤立化、反開発

サラ・ロイ 著 岡真理、小田切拓、早尾貴紀 編訳

  • なぜガザなのか パレスチナの分断、孤立化、反開発
    • サラ・ロイ 著 岡真理、小田切拓、早尾貴紀 編訳
    • 青土社2800円+10%
     本書は、イスラエルによる言語を絶する攻撃があった2008/9年・14年・19年のガザを、米国在住のパレスチナ人研究者の著者が取材し詳細に記した3章と、各章後に編訳者が23年10月以降の地点から見た論考で構成される。  時代を追う記述にガザの凄まじい変貌が見てとれる。生活物資も工業製品の輸出入も禁じられた時、エジプトとの間の“トンネル経済”が始まり、新たな富裕層が出現。だがその後は全住民が貧困に喘ぐ状態に。DVや心身の病の増化、子の養育拒否、水と土地の汚染と農業の壊滅…。人間の尊厳に対する凄まじい侵害が続く。14年の段階で「ガザは生存不可能」と著者は言っていたのだが。  ガザがアラブ世界との窓口であり占領への抵抗の中心であるため、パレスチナの政治的要求を消滅させる目的でイスラエルが攻撃しているのだ、と著者は説く。この暴虐に対し、国際社会はこんなにも無力なのか。今、「尊厳ある生」を望むガザの人々に、我々は何と答えるのか。(三)

    性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うなかれ  被害者と加害者が、往復書簡を続ける理由

    斉藤章佳、にのみやさをり 著

    • 性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うなかれ  被害者と加害者が、往復書簡を続ける理由
    • 斉藤章佳、にのみやさをり 著
    • ブックマン社 1800円+10%
    全ての性被害者が加害者と対話したいと思うわけではないし、する必要もない。しかし性被害者、にのみやは加害者にちゃんと罪に向き合ってほしいと対話を望み、性加害者への再発防止プログラムに取り組む斉藤がこれに応え、被害者と加害者の往復書簡を用いた「修復的対話」が実現した。本書はその貴重な記録と考察だ。  著者らが発見したのは、加害者が「被害のその後」を知らなすぎることと、加害者の自分の語れなさ。上っ面の謝罪や模範解答文をはねのけ、にのみやが人間としての敬意を示しつつ自分を開示して切り込むと、徐々に語り始める加害者。それは社会も被害者も知らない加害者の実態。そこでにのみやは加害者的思考や生き方から脱して回復する責任と贖罪とは何かを説くが-。  被害を減らすには、かつての被害者と加害者が共に生きられる社会が必要とのにのみやの言葉は、心に重く響き普遍性を持つ。(暁)

    地獄の反逆者 松村喬子遊郭関係作品集

    松村喬子 著 山家悠平 編集・解説

    • 地獄の反逆者 松村喬子遊郭関係作品集
    • 松村喬子 著 山家悠平 編集・解説
    • 琥珀書房2300円+10%
     著者(1900-93年)は戦前の名古屋中村遊郭の娼妓だったが、26歳で仲間と逃走し、自由廃業した。その年は、全国の遊郭で集団闘争やストライキが盛んに行われた年である。逃走から3年後、「女人芸術」誌に連載開始した小説「地獄の反逆者」を、編者がまとめた。副題に「人生記録」とある通り、主人公歌子は著者自身で、仲間たちに逃走を呼びかける。  働いても減らぬ借金や病気になっても酷使される娼妓たちがプロレタリア文学風に描かれるが、単なる告発にとどまらない。彼女たちの日常生活や仲間意識も丁寧に描かれ、ぽんぽん飛び交うセリフはガールズトークそのもの、楼主への反抗は痛快である。ステレオタイプではない登場人物たちがとても面白く、一気に読んだ。  自由になった著者は、廃娼運動や労働運動の活動家となった。戦後公娼制度は廃止されたが、今に至るまで「家族としての女性」と「買う女性」を分ける発想は変わっていない。(雪)
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