帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト 独立運動を描きなおす
尹錫男 絵 金伊京 著 宋連玉、金美恵 訳
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帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト 独立運動を描きなおす
- 尹錫男 絵 金伊京 著 宋連玉、金美恵 訳
- 花束書房2500円+10%
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韓国のフェミニスト美術家・尹錫男(ユン・ソンナム)が韓国画で描く女性がこちらを見据える。しゃべり出しそうに。本書はこれまで注目されてこなかった、家父長制や日本の帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニストの生き様を、尹の肖像画と作家・金伊京(キム・イギョン)の文で活写。歴史叙述でなく、インタビュー・手紙・独白等多様な形式で一人一人の人生を鮮やかに描き出した。
済州島の海女闘争を率いた金玉連(キム・オンニョン)、妓生から独立運動家になった丁七星(チョン・チルソン)…国を憂い、拷問に耐え、子を産み、武器を持つ者も。彼女らは帝国主義と家父長制がいかに結びつくかを喝破した。しかし解放後の南北分断で、北でも南でも「功労者」とならずに忘れられている者もいる。
彼女らは今のフェミニズム運動と地続き。何度も頁をめくり彼女らと出合いたくなる。(棠)
生理を、仕事にする。 台湾の生理を変えた女性起業家たち
ムーンパンツ 編 小島あつ子 訳
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- 生理を、仕事にする。 台湾の生理を変えた女性起業家たち
- ムーンパンツ 編 小島あつ子 訳
- アジュマ2500円+10%
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2000年代以降、台湾は生理用品先進国となった。なぜなのか。今、どんな生理用品が使われているのか?。本書は、鬱々とする生理を、自分の身体を愛おしめるようにと新しい生理用品を開発していった台湾の女性たちの奮闘記。
日本も同じだけれど、台湾も生理にまつわる女性蔑視に溢れ、生理の表現さえ男性視線で、生理は女性たちを苦しめた。自身が便利だと思える、もっとたくさんの選択肢をつくりたいと起業した著者たち。開発・輸入のための申請や許可、生産工場との課題のすりあわせなど、多くの山や谷を乗り越え、エコも求め、自分の身体も使って、デザインがステキで身体にもやさしい、生理が楽しくなるような布ナプキンからタンポン、月経カップ、そして「ムーンパンツ」をつくっていった。トランスジェンダー男性も対象のムーンパンツは、かっこよく、優れものだ。
女性たちが声をあげ、社会に変化を起こした。この本、誰もがエンパワーされる!(三)
ゾンビ家制度 軍拡と社会保障解体の罠
竹信三恵子、杉浦ひとみほか 著
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- ゾンビ家制度 軍拡と社会保障解体の罠
- 竹信三恵子、杉浦ひとみほか 著
- あけび書房1500円+10%
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岸田政権が打ち出した「防衛費5年間で43兆円」というとんでもない軍拡予算。本書は、2023年夏に開かれたシンポジウムの登壇者が、当日の発言に大幅な加筆修正をしたもの。軍拡予算の下で、男尊女卑の「家制度」がよみがえっていることを「ゾンビ家制度」と名付け、女性への無償労働の押し付けや、社会保障費が削減されている状況に警鐘を鳴らす。
軍事費の膨張を支える「家制度」(竹信三恵子)、法制度と市民の意識(杉浦ひとみ)、「死の商人国家」となる日本の危険な状況(杉原浩司)、打ち切られる公的支援と貧困の激化(雨宮処凛)、戦前の「国策落語」の恐ろしさ(古今亭菊千代)などが解説され、軍拡が市民の生活にどんな影響を与えるかがわかる。戦争が始まる前(軍拡)から、高齢者は「役立たない者」とされ、女性は低賃金や無償で働かされ、社会的弱者は追いつめられる。軍拡が生活や家庭、社会保障、ジェンダー平等を崩していくことに皆で声をあげねばと思った。(ん)