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ふぇみんの書評

「記憶」のなかの戦後史

向井承子 著

  • 「記憶」のなかの戦後史
    • 向井承子 著
    • フェミックス2200円+10%
     6歳の時、「城北大空襲」(第2次東京大空襲)で自宅が焼け、機銃掃射に襲われながら上野駅に向かい、北海道に移住。戦後はGHQの民主主義実験校の中学校で教育を受け、生徒会長となった著者。子ども時代の記憶や、60年安保闘争、北海道庁勤務時代のこと、活動家やライターとして執筆した医療問題などを綴る。雑誌「くらしと教育をつなぐWe」での連載をまとめた本書は、記憶と戦後史、個人の活動と社会をリンクさせ、貴重な証言も多く、読み応えがある。  2人の子どもを連れて、「日本婦人有権者同盟」の市川房枝を訪ね、以後、女性の権利のために闘う女性たちと出会い連帯する過程の描写が心地よい。青木やよひや俵萌子など数々の活動家の名前が登場し、懐かしく思う読者もいるのでは。  個人の経験を通しての社会的問題の言及には説得力がある。「脳死」臓器移植問題などに触れ、いのちへの科学や政治の介入を危ぶむ。戦中・戦後の社会を鋭く見つめた言葉をしかと聞きたい。(ん)

    戦友会狂騒曲

    遠藤美幸 著

    • 戦友会狂騒曲
    • 遠藤美幸 著
    • 地平社1800円+10%
     「戦友会」とは戦争体験を語り合う老人の集まり-ではあるが、昔を懐かしむだけだとは断定できない複雑さがある。ビルマ戦を研究する著者が、ガダルカナル戦やビルマ戦・拉孟戦(中国)などで戦った戦友会の「お世話係」になってほぼ20年。会員たちの隣で口を挟むことなく(でも“心の声”はつぶやく)、遺骨収集への強い思いや慰安所のこと、戦争観などを聞き取っていく。著者には研究材料の宝庫だ。会員の「戦争だけは絶対にするな」など、目を見張る言葉の数々も拾い上げていく。  しかし戦後70年、老人たちは確実に減った。そこへ保守系の考えを持つ若者たちが“招かれて”加わり、戦友会は変質していく。会員と若者の関わり方から、戦争体験の継承を考えさせる大問題が起きる。  今、戦後80年を控えて、自衛隊が戦友会とつながりを強めている、自衛隊と靖国神社の接近も急激に進むと著者は書く。事態の広がりに驚く。著者の問題提起にどう向き合うかが問われる。(三)

    日本社会とポジショナリティ 沖縄と日本との関係、多文化社会化、ジェンダーの領域からみえるもの

    池田緑 編著 江原由美子、定松文ほか 著

    • 日本社会とポジショナリティ 沖縄と日本との関係、多文化社会化、ジェンダーの領域からみえるもの
    • 池田緑 編著 江原由美子、定松文ほか 著
    • 明石書店 4800円+10%
    何らかの集団に属して生きる毎日で、特権を気にせずに生きられる多数派の言動に苛立つことがある。構造的な差別があっても、自ら変わる必要を感じない傲慢さに呆然としたことはないだろうか。  本書は副題に掲げた分野について、近年注目されるポジショナリティの視点から読み解いた。編著者はポジショナリティを、集団に属することで個人に存在する政治的な位置性、帰属する社会的集団や属性がもたらす利害によって個人が負う責任の様態を示す概念などと解説。例えば、男性の「女性って大変だね。応援しています」という言葉に対して、男性自身が自分事として女性の社会進出を妨げる課題を解消して―と思うことをポジショナリティの齟齬と捉える。  玉城福子は沖縄社会と日本社会、ジェンダーから、現実認識の相違として現れる状況を考察。問題の構造を見直す視点から自分の立ち位置を再確認する一冊。(春)
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