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ふぇみんの書評

家父長制はいらない 「仕事文脈」セレクション

仕事文脈編集部 編

  • 家父長制はいらない 「仕事文脈」セレクション
    • 仕事文脈編集部 編
    • タバブックス1400円+10%
     仕事や生き方、社会を考えるリトルマガジン、「仕事文脈」。毎回多彩なテーマで特集が組まれるが、ジェンダー、セクシュアリティ、フェミニズムに関わる近年の記事を集めたのが本書。共通するテーマは、「(反)家父長制」だ。  様々な書き手による、ことば・表現、カルチャー、家族、社会・政治、セックス、クィアに関する言葉たちは、時に鋭く社会に切り込み、時にそっと寄り添ってくれ、世界の見え方を変え、新しい自分と社会を拓く一助になってくれる。中でも「美術の場でセーファースペースをつくる」のケルベロス・セオリーさんの言葉、フェミニストでも何らかのマイノリティ性を持っていても、「だから差別や暴力を再生産しないというわけではない」から「学び落とし」「常に知り、考え、試行錯誤していかなければならない」、が本書の真髄に通じる。  手の平サイズでありながら、表紙(装画はsuper-KIKIさん!)と共に放つエネルギーと珠玉の言葉に出会える。(唐)

    ホームレスでいること 見えるものと見えないもののあいだ

    いちむらみさこ 著

    • ホームレスでいること 見えるものと見えないもののあいだ
    • いちむらみさこ 著
    • 創元社1400円+10%
     東京の大きな公園の奥に、ホームレスの人たちが住む「村」がある。20年以上そこで暮らす著者の言葉から、“自分らしくいること”とか、自由や安心て何だろう、と考えさせられる書だ。  絡め取られがちな資本主義や家族主義から逃れることは、だれもができるわけではない。でも、思い切って行動し、「家父長制に支配されたホームには帰らず、ホームレスを選択したい」と書く著者に、共感する。  一人でなんでも耐えなければならないホームレスの女性たちと〈ノラ〉という場を作り、語り合い、思いやり、ごはんを食べ、議論もする。女だからと投げられる性的な眼差しや、管理や監視などの行政の介入に抵抗する。時に襲われる恐怖感や孤独感によって、生きる力を奪われないようにとつながるシスターフッドが心に沁みる。つらい時の乗り切り方は想像力が満開だ。これでよかったのかと揺れつつも、生き方を貫く姿に、静かにうなずいた。(三)

    恋愛しない私でも「源氏物語」は楽しめますか

    西原志保 著

    • 恋愛しない私でも「源氏物語」は楽しめますか
    • 西原志保 著
    • 春秋社2000円+10%
     恋愛の物語というイメージの強い「源氏物語」だが、アセクシュアル的(性欲を持たない)・同性愛的に見える人物が登場し、必ずしも恋愛至上義の世界だけを描いていないことを、本書はまず指摘する。  近代以降成立した、恋愛していないとプライベートが充実していないと見なされる恋愛中心の人間観がいまだに浸透している現状を、「源氏物語」「紫式部日記」など古典文学と、現代ドラマ「恋せぬふたり」「逃げるは恥だが役に立つ」や漫画「ダルちゃん」を読み直すことで、現代に生きる人々のセクシュアリティやアイデンティティ、仕事とプライベートの境界等を解きほぐしていく。  著者の専門は平安文学だが、恋愛や生殖に忌避的な女性の感性に注目し、日本近現代文学・文化も対象とする研究者。前著では恋愛に消極的とされる女三宮をとりあげた。古典作品を、できる限り書かれた時代の言葉や文化的文脈に即して読もうという試みが、常に現代的な意味を持つことを教えてくれる。(晶)
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