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ふぇみんの書評

地震と虐殺 1923-2024

安田浩一 著

  • 地震と虐殺 1923-2024
    • 安田浩一 著
    • 中央公論新社 3600円+10%
     1923年関東大震災後の朝鮮人・中国人などへの大虐殺に関わるルポ。著者は、虐殺現場となった東京・千葉・埼玉・神奈川・群馬、さらには新潟や福島、韓国などで丹念な取材を重ね、「誰」がどう虐殺したのかを浮かび上がらせる。  政府がデマの電文を発信し、軍隊が警察が民衆が、残酷に殺害。軍が村に朝鮮人を「配給」し殺させた例、警察が止めても民衆が殺した例、信じたくないほど残忍な殺害もあり、女性が加担していた例も…。デマを報じた新聞は謝罪もしない。地元で証言を集め、歴史を掘り起こし、追悼活動をする人々も多く取り上げている。著者は過去の出来事に想像力を働かせながら、ヘイトをする人々や虐殺を否定したい政治家が増えている今の社会と重ねる。「地震直後の混乱だけが虐殺の要因ではない」「虐殺を促したのは差別と偏見である。国家権力が差別と偏見を社会に刻印し、少なくない人々がそれを受け入れた」には説得力がある。ずしりと心に響く書だ。(り)

    韓国社会運動のダイナミズム 参加と連帯がつくる変革

    三浦まり、金美珍 編

    • 韓国社会運動のダイナミズム 参加と連帯がつくる変革
    • 三浦まり、金美珍 編
    • 大月書店2600円+10%
    キャンドル革命、#MeToo運動…韓国の社会運動は、力強く、確実に社会に変革をもたらしている。連続シンポジウムを機に編まれた本書は、軍事政権下の民主化運動から始まり、#MeToo、移民・外国人労働、住民参加に基づく「協治」、コロナ禍とエッセンシャル・ワーカー、ベーシック・インカム(BI)の観点から、運動の変遷、内実、挫折、今後の展望や課題を、運動に携わった人や研究者らが詳らかにする。  日本と違うのは、運動側の提案やアイディアが政権交代で実現されること。ソウル市が実施した住民参加型事業と予算実施、ディーセントワーク創出に寄与する社会サービス院…。外国人労働やBIをめぐる議論など、時に異なる立場からぶつかり合う論考もあり、それがまさに韓国内での活発な議論の証左でもある。  読み口は決して平易ではないが、韓国の社会運動の実態を知り、学びを得ようとする個人にも活動団体にも最適な書だ。(W)

    砦の上に 南方新社本づくり30年

    向原祥隆 著

    • 砦の上に 南方新社本づくり30年
    • 向原祥隆 著
    • 南方新社2000円+10%
     東京から鹿児島にUターンして、出版社「南方新社」を立ち上げ30年の著者が、2002年から書きためた日誌と「舞台裏」と題する活動の記録を、濃い一冊にまとめた。  出版業と並行し市民運動にも深く関わり、とりわけ川内原発反対運動は長い。福島原発事故後、2012年には脱原発を争点に、〈地域が変われば、国も変わる〉と県知事選に立った。川内原発再稼働(15年)には先頭で立ち向かい、原発の運転延長に対する県民投票運動の中心にも。市民運動との関わりをまとめた活動記録は必読だ。  日誌には、焼酎と魚を愛する著者の食に関する話題も多い。釣り好きで、出版原稿が舞い込むほど多忙なのに、仕事に詰まると釣りに行ってしまう。だからこそ、川内原発の温廃水が海の生態系を壊すことが許せない。沖縄や奄美もカバーする図鑑シリーズは興味深く、『海辺を食べる図鑑』は著者の真骨頂か。  田舎は東京の植民地か、という著者の言葉をかみしめた。(三)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
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     郵便振替:00180-6-196455
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