WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

韓国映画から見る、激動の韓国近現代史 歴史のダイナミズム、その光と影

崔盛旭 著

  • 韓国映画から見る、激動の韓国近現代史 歴史のダイナミズム、その光と影
    • 崔盛旭 著
    • 書肆侃侃房2200円+10%
    韓流好きにはたまらない本だ。韓国生まれで、日本の大学で映画や韓国現代史などを教える著者が44本の作品を解説。韓国の歴史や社会背景などを詳細に語り、作品鑑賞の面白さを教えてくれる。  「ファクト(事実)」に「フィクション(虚構)」をあわせた「ファクション」の映画が多い韓国。『タクシー運転手 約束は海を越えて』は「光州事件」を扱うが、様々な事実を導入し、観客が感情移入できるよう脚色されている。実際の性暴力事件を基にした『トガニ 幼き瞳の告発』は、法律まで動かした。韓国映画は自分が動けば社会は変えられると思う人の力強さや、絶望の中での希望も描く。韓国のダイナミックな現代史もよくわかり、自国の恥部も晒し、社会まで動かす韓国映画の力を本書であらためて感じた。日本との比較、著者の正直な告白や過去の素直な思いが綴られているのもいい。紹介作品全部見直したくなった。(ぱ)

    わたしたちが起こした嵐

    ヴァネッサ・チャン 著 品川亮 訳

    • わたしたちが起こした嵐
    • ヴァネッサ・チャン 著 品川亮 訳
    • 春秋社2700円+10%
    マレーシア出身作家のデビュー小説。イギリス統治下マラヤ、主婦セシリーは、「共にアジア人のためのアジアを作ろう」と接近してきた日本の工作員フジワラに協力する。役人の夫が持つ情報を密かに流し、イギリス空軍が放火で打撃を受けた時には「幸甚のいたり。次は?」と書きつけるセシリー。やがて日本軍が来襲し、イギリスとは比較にならない残虐さでマラヤを支配する。「ロームシャ」や「慰安婦」も描かれる。作者がまえがきで「このあいだ(1941~45年)のことは孫たちには話さないというのが祖父母の愛のかたち」と記す痛みを、我々はどれだけ認識しているだろう。日本占領がマレー半島の人にどう記憶されているか、目を背けずに受け止めねばならない。  歴史と記憶の問題を突きつける本作は、女と男、陰謀と裏切りの残酷な物語でもある。「不条理なまでの完璧な円環」が閉じられた時、読者はスリリングなミステリーを読んだ満足を得るだろう。少女たちの理性と賢さが希望を残す。(雪)

    ガザ日記 ジェノサイドの記録

    アーティフ・アブー・サイフ 著 中野真紀子 訳

    • ガザ日記 ジェノサイドの記録
    • アーティフ・アブー・サイフ 著 中野真紀子 訳
    • 地平社2800円+10%
     著者はヨルダン川西岸在住で、パレスチナ自治政府文化大臣も務める作家。イスラエルによる攻撃開始の日は、15歳の息子と偶然ガザ滞在中だった。留まる決断をし、破壊と虐殺の目撃者となり、日々の記録を国内外に発信していく。時にユーモアすら交えて。  父親や多数の親戚が住まうガザ北部はすぐ頭上をロケット弾が飛ぶ。毎日知人も犠牲になっていく。イスラエル軍の立ち退き通告により向かった南部のラファでは、ナクバ当時のようなテント暮らしに。だが移動先も安全ではない。病院が、学校が、支援機関が攻撃されて、人も思い出も歴史も消されていく。死んでも家族に連絡がいくように体に電話番号を書く子ども。腐り始めて道に同化する人間。インフラは壊滅し、生存も危うい。著者は残されたものを記憶しようとする。そして年末にラファからエジプトへ脱出した。「残っても苦しみ、去っても苦しむ」  言葉の力によって、戦場にいるような錯覚に陥る。(三)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
    このページのTOPへ