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ふぇみんの書評

パリと五輪 空転するメガイベントの「レガシー」

佐々木夏子 著

  • パリと五輪 空転するメガイベントの「レガシー」
    • 佐々木夏子 著
    • 以文社 2700円+10%
    著者は2007年以来仏在住の翻訳家。今や誰よりもパリ五輪の闇に詳しく、失敗や問題はどこでも必ず起きることを世に問いたかったと語る。  パリと東京の五輪観の比較が興味深い。経済成長後、工場の跡地に再開発で巨大なスタジアムが建設される。難民キャンプの強制排除や植民地出身者が住む共同住宅が取り壊され、関連施設が建てられるが、「白い巨像」(無用の長物)化する。地下鉄や高速道路が整備される。セーヌ川の浄化作戦も…。一方、共産党が五輪を推すため、右派が五輪に反対。植民地主義国フランスらしく、サーフィン会場はタヒチ。エコ五輪を標榜するが、実は使い捨てがエコだと謳う不思議な論理を展開。そして、日本と違って自己主張する人々の反対運動が一部成果を収めている。  フェミニズムの利用や、ピンクウオッシュも指摘。五輪マネーと共に、放映権ゆえに五輪批判できないメディアの共犯性も。こんな五輪に未来はない。(三)

    読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門

    N・トロコンニコワ 著 野中モモ 訳

    • 読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門
    • N・トロコンニコワ 著 野中モモ 訳
    • ソウ・スウィート・パブリッシング2600円+10%
    プッシー・ライオットとは、2011年に結成されたロシアのフェミニスト・パンク集団。著者は立ち上げメンバーの一人で、12年にはモスクワの女人禁制のロシア正教会祭壇前で、「プーチンを追い払え!」と祈願するパフォーマンスで逮捕され、懲役2年に。本書はそんな著者による思索と行動の実践書。  著者が掲げるのは、「海賊になれ」「DIY」「喜びを取り戻せ」「政府をびびらせろ」など10のルール。誇り高き魔女と「あばずれ」であるために、批判の目を曇らせるものも列挙(完璧主義や貪欲等)。何より著者が活動に必要と強調するのは、アートの力と、愛、笑い、喜びだ。  過酷で劣悪な刑務所生活すら己のパワーに変え、出所後は、監獄改革に取り組む団体と独立メディアを創設。ロシアのウクライナ侵攻を真っ先に批判し、出国した今も独裁政権と家父長制打倒に邁進する著者。推薦図書リストも収録。やること、やれることは山ほどある。そう、都知事選の結果に落ち込んでいる暇はない。(蘇)

    表現の不自由展からの挑戦 消されたアートと対話する12のヒント

    岡本有佳、岩崎貞明、李春煕 編

    • 表現の不自由展からの挑戦 消されたアートと対話する12のヒント
    • 岡本有佳、岩崎貞明、李春煕 編
    • 梨の木舎1900円+10%
     始まりは2015年、東京の小さなギャラリーの展覧会だ。15日間に2700人もの人が訪れた。天皇や戦争、植民地支配、「慰安婦」問題、憲法9条、原発等々、検閲や自粛・封殺等「消されたものたち」の作品展。19年に「あいちトリエンナーレ」で企画された「表現の不自由展・その後」では妨害が殺到し、展示の一時中断で注目を集めた。  本書は、22年4月にようやく実現した東京展の経験と教訓、課題を共有するために編まれた。12のQ&A、憲法学者右崎正博さんのインタビュー、映画監督ミキ・デザキさんや、参加者らから寄せられた文章で構成される。それぞれ、短い中にぎゅっと凝縮された文章だ。右崎さんは、憲法21条「表現の自由」の核心は少数意見の保護にあり、そのために行政は公共施設を使用させる義務があると、明快だ。  展覧会場、展示作品のカラー写真もふんだんに盛り込まれ、小さな図録のようでもある。この美しい本がたくさんの人の手に届くことを願う。(の)
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