エトセトラ VOL.11 特集 ジェンダーと刑法のささやかな七年
小川たまか 特集編集
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エトセトラ VOL.11 特集 ジェンダーと刑法のささやかな七年
- 小川たまか 特集編集
- エトセトラブックス1400円+10%
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2017年の刑法性犯罪規定改正への動きとその後を振り返り、かみしめ、さらに進むために「ささやかに」(←皮肉)編まれた。
改正後の見直しの期間を経て23年の更なる法改正まで、性暴力被害サバイバーと、法律家など実務家と市民の強固な連携が世論を突き動かした。当時の勢いに、筆者も社会が変わるかもしれない、と胸が熱くなった。そして血がにじむような女性たちの固い意思が社会を突き動かしたことを、本書で確かめてほしい。被害当事者3人が、刑法改正への活動で自分たちの力を取り戻したと語ることや、困難な性暴力裁判を闘った女性の強い意志を知ったことに、勇気づけられた。
一方、ジャニーズ問題を取材する男性記者の、興味本位から抜け出せない意識に唖然とする。入管法「改正」と、刑法再改正の国会での審議が同時期になったとき、優先順位で争わず私たちが分断されなかったことには、今振り返ると安堵する。編者の熱のこもった一冊。(三)
ハマれないまま、生きてます こどもとおとなのあいだ
栗田隆子 著
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- ハマれないまま、生きてます こどもとおとなのあいだ
- 栗田隆子 著
- 創元社1600円+10%
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掌にスポっと収まるお手軽感、ポップな色彩と紙のざらつきはまるでZINEのような本なのに、とてつもなく深淵な、生きるためのヒントがぎっしり。本書は、10代以上の全ての人のための人文書シリーズ「あいだで考える」の一冊。シリーズは物事の「あいだ」に身を置いて考えることの実践者が執筆者で、本書の著者は非正規労働者の経験があり、女性の貧困・労働問題の発信や活動をしてきた文筆家。幼少期から今まで、子どもにも大人にもハマれない「変なイキモノ」である自身の“生態”を詳らかにし、自己否定感から自分にも他人にも暴力的だった時期を経て、やがてフェミニズムとキリスト教に出合って、「言(ことば)」と「思想」を獲得し、行動し、深呼吸をして生き延びた今までの道のりが綴られる。
立派な大人の年齢になっているはずの私も胸打たれた。なぜなら社会が求める「らしさ」の呪縛は一生付いて回るからだ。ハマれない著者だからこその視点が、私たちを少し自由にしてくれる。(ソ)
マンガで読むジェンダー入門 男らしさ/女らしさの束縛から解放されよう!
メグ-J・バーカー 著 J・シール 絵 松丸さとみ 訳
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- マンガで読むジェンダー入門 男らしさ/女らしさの束縛から解放されよう!
- メグ-J・バーカー 著 J・シール 絵 松丸さとみ 訳
- いそっぷ社1600円+10%
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著者はイギリスの作家・ジェンダー研究者。文字もイラストもたっぷりな「教科書」なので、通読してジェンダーの歴史や理論を学ぶのもいいが、文学や映画など好きな分野の“現在地”を調べるのもいい。読みたい本、見たい映画、聞きたい音楽が見つかる本だ(英語圏の作品に偏り気味なのがいささか不満です)。
なるほど!なトピックは多い。伝統的な「幸せ」(結婚、子を持つ…)に疑問を投げるフェミニストは「水を差す存在」(キルジョイ)と呼ばれることがあるらしい。killjoy!喜びを殺す、ですよ?なんという危険な存在でしょう、フェミニストとは。ちなみにこの言葉は「わきまえない」(出た!)とも訳せる。
近年特に変化しているジェンダー関連の表現も紹介。MrやMsに代わる敬称Mx、heやsheに代わるtheyは覚えておきたい。おなじみladies and gentlemenはどう言い換える? 答えは本書で。(雪)