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ふぇみんの書評

ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織

ローラ・カプラン 著 塚原久美 訳

    ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織
  • ローラ・カプラン 著 塚原久美 訳
  • 書肆侃侃房2500円+10%
1969年、中絶が違法だった米国シカゴで結成された〈ジェーン〉は、「女性解放の中絶カウンセリング・サービス」というグループが、連絡用に使っていたコードネームだった。困っている女性たちの相談に乗り、裏社会の中絶医に斡旋していた〈ジェーン〉は、「生殖を自己コントロールすることこそ女の自由の根源」と考え、安全な中絶施術を提供する女性主導の活動に発展していく。69~73年の間に推定1万1000人の女性たちが人工妊娠中絶を求め駆け込んだという〈ジェーン〉の歴史を、メンバーだった著者が膨大なインタビューを基に記した。  著者曰く「集合的回想録」の本書は、「ごく普通の女たち」による冒険譚でスリリングでドラマチック。100人以上がメンバーとして関わったという地下組織運営の難しさもよくわかった。何よりもシスターフッドを通して女たちがエンパワメントし、未知に挑戦し、安全な中絶や心身のケア、様々な権利を求めていく過程に心底感動!(ぱ)

インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど

西山ももこ 著

  • インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど
  • 西山ももこ 著
  • 論創社1800円+10%
インティマシー・コーディネーター(IC)とは、体の露出や性描写のあるシーンに立ち会うコーディネーターで、俳優の同意と演出の意向の調整役を担う。#MeTooを経て英米で2018年頃から導入された。著者は20年からICとして働き始め(日本では2人)、これまで40作品以上に立ち会ってきた。  ICは規範を押しつけるのではなく、あくまで調整役と強調する著者。その仕事の内実は「性的同意」のお手本だ。体の境界線はどこか、どこの部位なら触っていいか・映していいか等を、俳優が言いやすい環境を作り毎回確認。IC講座で初めてジェンダーを学び、日本のメディア環境に足りないのはこれだ!と思った著者。時に「その性描写は必要か」「なぜ女性=派遣社員なのか」等にも踏み込む。加えてメディア業界の下請け搾取等の悪しき体質を批判し、次の世代ために闘う。実直な語り口の本書は、「性的同意」をめぐり私たちが目指すべき地平を示す。(S)

7人の戦争アーカイブ あなたが明日を生き抜くために

内海愛子 編

  • 7人の戦争アーカイブ あなたが明日を生き抜くために
  • 内海愛子 編
  • 梨の木舎2200円+10%
 『ぼくらはアジアで戦争をした』(1986年)の新装増補改訂版。編者の聞き取りに、二度と戦争をしないためにと、7人が体験を語る。  共通するのは、自分たちにとってアジア人は顔や名前のない存在だったこと。だから「生体解剖も『日常茶飯事』になると忘れちゃう」。今後は「現在のアジアの人と固有名詞で語るような関係を作らなきゃいけない」(湯浅謙)と。  天皇・政治家・新聞の戦争責任を問わなかったことが、その後の「具合の悪いことは忘れてしまいたいという意識」(岡本愛彦)を生み、A級戦犯が政治的意図で釈放されても批判できなかった。あとがきにある通り、正直な告白と告発は誠実な自己批判として語り伝えられるべきだ。  戦争への準備が進められる今、この本の復刊の意義は大きい。「戦争は誰かが行ってやってくれるぶんにはやむを得ないが、自分が行くのはいやだといった気持ちが」みんなにあった、という亀井文夫の言葉は衝撃的だ。(雪)
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