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ふぇみんの書評

埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち

高柳聡子 著

    埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち
  • 高柳聡子 著
  • 書肆侃侃房2000円+10%
ロシア文学には1890年代から1920年代にかけて、若い詩人たちによる興隆期、「銀の時代」があったという。ロシア文学者の著者は、ペテルブルクの書店で見つけた「銀の時代」の女性詩人101人を紹介する本(2000年刊)に出合った。本書は15人の女性詩人の詩と解説、生き様等に著者が光を当てる。  「詩集とはある世界観の具象」と著者。15人の詩の世界観と言葉は実に豊かだ。素直に感情を吐露するモラフスカヤ、中絶や性行為の「痛み」を表現するシカプスカヤ、森の苔や風も人も世界の構成要素と考えたグロー、「女の言語」を創出したいと考えたブロムレイ…。革命や戦争に翻弄され、20世紀にフェミニズム批評がなかったロシアで、詩人として生きる困難もあった彼女らの言葉や人生を、著者は丁寧にすくい、寄り添い、共感し、呼応し、思考の翼を広げ、言葉を紡ぐ。今のウクライナにも思いを馳せながら。美しい装丁とコンパクトな大きさで、いつでもどこでも彼女らの言葉に出会える。(榜)

国より先に、やりました 「5%改革」で暮らしがよくなる

保坂展人 著

  • 国より先に、やりました 「5%改革」で暮らしがよくなる
  • 保坂展人 著
  • 東京新聞 1400円+10%
市民派の東京・世田谷区長で、ローカルイニシアティブネットワーク(LIN-Net)世話人の一人である著者が、地方自治は“国の下請けではない”と事例を示して語る。東日本大震災直後に当選したが、期待に反して何も変わらないと批判を受けた。でも著者の考えは「5%」改革。見えづらくても1年で5%を変えれば、8年で30%は変わると読む。  〈こっそり進め、公開したら住民が意見を言えない〉行政じゃダメ。町づくりに「北沢デザイン会議」を作るなど、住民を巻き込む。「同性パートナーシップ宣誓制度」では、自治体の裁量がどこまで可能か熟慮。コロナ禍の対応、特にPCR検査の拡充で国をリードした。国の判断を待たずに道を拓くことが自治体の役割だと考える。  著者はよく聞き、対話する。批判されても持論に根拠があれば曲げない。アンチでなく、リノベーション…。地方自治体から変えていくという思考は、地方自治法「改正」への強固な反論になる。(三)

被災者発の復興論 3・11以後の当事者排除を超えて

山下祐介、横山智樹 編

  • 被災者発の復興論 3・11以後の当事者排除を超えて
  • 山下祐介、横山智樹 編
  • 岩波書店2600円+10%
 東日本大震災と東電福島第一原発事故の後、10年間で40兆円が復興に充てられた。それは被災当事者のための復興だったのか。宮城県石巻市雄勝町、福島県双葉郡富岡町、宮城県気仙沼市大谷地区の3人の被災者が、ある者は津波に流され、ある者は原発の爆発から逃れるところから本書は始まる。  その後、彼らは地域住民として、散り散りに避難したコミュニティを維持するべく各地でタウンミーティングを繰り返し、住民間のネットワーク構築を試み、復興を模索した。中には防潮堤の仕様変更に成功した所もあったが、多くは当事者発のプランが行政の既定路線によって退けられた。しかも、復興政策にのれば「同情」「支援」の対象となるが、異議を唱える物言う被災者には、「わがまま」「こわい」との目が向けられた。  政策現場で当事者の声が排除されただけでなく、われわれ市民の側が原発や津波の被災地の存在を疎ましく感じてはいなかったかと著者らは警鐘を鳴らす。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
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 加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
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