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ふぇみんの書評

彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家

北村匡平、児玉美月 著

    彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家
  • 北村匡平、児玉美月 著
  • フィルムアート社 2400円+10%
女性差別がはびこる日本映画界。本書は女性映画監督の作品を評論する。ここまで詳細かつ情熱に満ちた評論があっただろうか。  中でも16人の女性監督論が圧巻だ。女性スタッフが結集し男性の性的目線に回収されないよう撮ったアニメ『けいおん!』の山田尚子、撮る・撮られる・観る女の子を平等な立場で視覚的に示す山戸結希等、各監督の作風、テーマ、撮影手法、新規性等を詳細に評する。田中絹代が最初にレズビアニズムを描いたのに驚き、男性の欲望とフェミニズムを拮抗させた浜野佐知のピンク映画の評論も秀逸だ。2010年代後半に劇場公開デビューした次世代監督紹介や見所を押さえた作品ガイドも。  確かに女性監督らは家父長制、異性愛等の既存のシステムを瓦解させる。しかし本書が立ち上がらせるのは、その先の「彼女たちのまなざし」が作り出す世界の豊穣さ。だからこそ「女性監督」の呼称を手放せるよう焦燥感を持つとの児玉の指摘に深く頷く。(栖)

国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係

鈴木宣弘、森永卓郎 著

  • 国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係
  • 鈴木宣弘、森永卓郎 著
  • 講談社900円+10%
「食料安全保障」の問題を訴えている学者(鈴木)と、財務省の政策や構造を批判し、野菜など「自産自消」的農業もしている経済アナリスト(森永)による対談が収められた本書。政治家や官僚たちをバサバサと鋭く斬る2人の発言は非常に小気味よく、面白かった。  しかし内容は深刻だ。有事が起これば食料自給率の低い日本は最初に飢える。農業政策は財務・経産省と、日米の利害関係企業に牛耳られているという。米国の言いなりで、利権や既得権を手放さない「今だけ、金だけ、自分だけ」の者たちが、日本の農・漁業を壊滅させ、格差と貧困を生み出しているようだ。  「愛国」という言葉は嫌いだが、食料は「愛国者」でいたい。水田は治水にも役立ち、一度潰したら元に戻すのは困難だ。「地産地消」は環境にあまり負荷をかけず、安全・安心にもつながる。国民=日本に住んでいる皆が、輸入品をできるだけ避け、国産・地元産を求めれば、農業政策も社会?も変わるかもしれない!(う)

ルポ 低賃金

東海林智 著

  • ルポ 低賃金
  • 東海林智 著
  • 地平社1800円+10%
 大手紙記者で、労働や格差・貧困を取材してきた著者。年越し派遣村(2008~09年)からコロナ禍の、主に非正規で働く人々からの聞き取りはずっしりと重い。1995年に日経連が新自由主義を基に提案した「新時代の日本型経営」が元凶だと指摘。これにより低賃金の非正規労働が生まれ、労働者は分断された。  収入が逼迫し、犯罪に手を染めた女性。DV夫から逃げたけれど、個人請負の仕事がたち行かなくなって追い詰められた女性。会計年度任用制度で雇い止めされる人たち。有期雇用から無期転換しても労働条件は変わらない現実。いずれもコロナ禍でのこと。どうやって生きていけばいいというのか。  他方で、23年夏、労働者が一斉に連帯した東京・池袋西武百貨店のストに新たな展望を見た。非正規の人々が労組に入って立ち上がった事例にも希望がある。私たちは誰とどう闘うのか。奪われた尊厳をどう取り戻すか。孤立させない支援も重要だ。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
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