WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

軍事力で平和は守れるのか 歴史から考える

南塚信吾、油井大三郎、木畑洋一、山田朗 著

    軍事力で平和は守れるのか 歴史から考える
  • 南塚信吾、油井大三郎、木畑洋一、山田朗 著
  • 岩波書店2300円+10%
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を機に、日本を含め世界中が軍事力強化を進めている。それに対し、歴史学の観点から分析と抵抗を試みた画期的な書。日本の平和国家の歩みを大事に生きてきた歴史学者らの矜持を感じる。  ロシアの侵略の原因を1980年代以降の世界情勢から説き起こし、近現代世界史の中で起きた戦争の連なりの中に位置づける。軍拡や武器の進化が戦争を呼び起こすと同時に変質もさせてきた歴史、曲がりなりにも戦争を違法化した歴史、市民の平和運動の歴史…。歴史が証明するのは、ウクライナ戦争を止める機会があまたあったこと、軍拡や軍事同盟が抑止力にならず、逆に戦争を招いたという史実。日本の第2次大戦敗戦分析も示唆に富み、その時の要因(世界情勢と中国への認知の歪み、軍事優先政策等)が今の日本に当てはまることに、背筋が凍る思いだ。  希望はここに、ある。「力の論理」でなく歴史学から導かれた提言こそ広く知らせたい。(棠)

それは丘の上から始まった 1923年 横浜の朝鮮人・中国人虐殺

後藤周 著 加藤直樹 編

  • それは丘の上から始まった 1923年 横浜の朝鮮人・中国人虐殺
  • 後藤周 著 加藤直樹 編
  • ころから1800円+10%
 神奈川県横浜市の中学校教員だった著者は、長年関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺研究をしてきた。フィル―ドワークを積み重ね、当時の子どもたちの作文や公文書などの資料を丁寧に読み解き、市民の避難先だった横浜の南の丘から「朝鮮人暴動」の流言が生まれ、虐殺が始まったと確信。被殺者が最も多かったといわれるが起訴数が極端に少なかった横浜の状況を詳細に検証している。  震火災の被害がとりわけ大きかった横浜は、通信・交通が途絶し、混乱状態の中で警察は機能せず、逆に流言を肯定し、虐殺を煽っていったことが虐殺拡大に決定的な影響を与えたとする。また、朝鮮人を守ったとされる“美談”の真相にも迫る。丘の上の流言から、虐殺の記憶を後世に残そうとする人々の行動まで、思い込みや安易な解釈をせず、真実に迫ろうとする丁寧な分析が胸を打つ。横浜の虐殺はまだ不明点が多いという。多くの市民が殺人者となった歴史の検証は何度も必要だろう。(ん)

聞き書き・関東大震災

森まゆみ 著

  • 聞き書き・関東大震災
  • 森まゆみ 著
  • 亜紀書房2000円+10%
地域雑誌「谷根千」を編んだ著者が、関東大震災を振り返り、「谷根千」に載せた多くの市井の人々の声や、幸田露伴や宮本百合子など著名人の経験談を網羅した。迫りくる赤い空と煙の記憶、人の焼ける匂いが忘れられないこと、大八車で家財一式を運びだす人々で道が混雑し避難を困難にした事実。朝鮮人虐殺に巻き込まれたある朝鮮人の、「多くの同胞の命を奪った日本帝国主義への憎しみは忘れない」という語りは生々しい。  震災後、東京は復旧ではなく復興へ進んだ。頑丈な復興小学校は今も残る。また、都市計画担当者が「路上生活者も公園の利用者」と明言した言葉も拾う。しかし、恐慌を背景に治安維持法施行へと向かう。  重要なことは災害から何を学ぶかだと著者は記す。低地は元川床で地盤が弱いこと、日比谷公園や神宮外苑の緑が都市を守ること…。阪神や東日本の震災も併せ、大災害に対する心構えで稿を結ぶ。この100年間の震災から多くを学べる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ