WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

女性不況サバイバル

竹信三恵子 著

    女性不況サバイバル
  • 竹信三恵子 著
  • 岩波書店1000円+10%
コロナ禍は女性に大きな被害を与え、失職した人も多く、一斉休校措置等で家庭内のケア労働負担も増した。女性を中心に起きた経済危機である「女性不況」は、日本でも少しは可視化されたが、女性の困難は続いている。本書は女性を沈黙させ、貧困化させる、「夫セーフティネット」「ケアの軽視」「自由な働き方」「労働移動」「世帯主主義」「(外国人労働者)強制帰国」の6つの「仕掛け」について、丁寧な取材等から分析している。  「家計補助」というレッテルを貼り、「自由な働き方」として公的セーフティネットから外れていく非正規職やフリーランス。給付金は世帯主にまとめて支給。妊娠した外国人労働者は解雇。女性の貧困化は深刻だ。だが、このような家制度的で女性の労働価値を貶める施策は、男性も含めた労働条件を劣化させているという。「女性の労働問題の解決こそ、日本の労働問題の核となる課題」に頷く。女性たちが改革に動き出している事例も多数紹介。連帯し広げたい。(よ)

わたしの香港 消滅の瀬戸際で

カレン・チャン 著 古屋美登里 訳

  • わたしの香港 消滅の瀬戸際で
  • カレン・チャン 著 古屋美登里 訳
  • 亜紀書房2500円+10%
 2014年の雨傘運動と19年の行政府への大規模抗議デモが起きた香港。しかし20年以降は民主化運動への徹底弾圧が続く。ジャーナリストの著者が記した分厚い本書から立ち上るものは、膨大な量の人々の声と個人史と政治の記憶であり、「煉獄の都市」となった香港への深い愛や惜別の情だ。  デモに加わる時間と、音楽を楽しむ時間がパラレルに繋がる日々。地下鉄の駅で血だまりを跨いで電車に乗る、という経験談はあまりにリアルだ。  今後、香港は大国に呑まれていくのか。「絶対に許すことなどできない時代の崖っぷち」で、「忘れてはならないことを、忘れないために」書くこと。記録はすべて抵抗する行為である、という著者の強固な意思が伝わる。本書で過去の出来事を現在形で書くのは、忘れてはならない姿だからなのか。ここにはいられない日が来るかもしれない。だから、今、香港をくまなく見ておかねばという著者の行動からは、身悶えするような想いが伝わる。(三)

日本人が移民だったころ

寺尾紗穂 著

  • 日本人が移民だったころ
  • 寺尾紗穂 著
  • 河出書房新社1980円
第1次大戦後に日本統治下となった南洋群島に移住した人たちは、第2次大戦末期に戦場となった島で家族を殺され、飢え、築き上げたすべてを失った。引き揚げ後も「到底人の住める所ではない」荒地を与えられ、長年の格闘のすえ暮らしを安定させた人たちもいたが、度重なる災害などで見切りをつけ南米などに再移住した人も少なからずいた。  本書はこうした人たちを日本各地や南米に訪ね、その語りを収めた。ただ、客観的な聞き書き集ではなく、音楽家でもある著者は、その地で暮らす人ともふれあいつつ繊細な感覚で受けとめた思いも記している。  国策に翻弄され辛酸をなめたが、最初の移住地にいまなお郷愁を抱く人も多い。「より生きやすい場所を求めて」海を渡り暮らしを築いた人々にとって、そこは単に金銭を得る場所ではなかった。いま、「労働力」としての移民受け入れが取り沙汰されるが、過去に多くの移民を送り出してきた歴史に学ぶ必要があるだろう。(葉)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
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