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ふぇみんの書評

聞き取り もうひとつの隔離 ハンセン病療養所附属保育所に収容された子どもたちの人生

福岡安則 著

    聞き取り もうひとつの隔離 ハンセン病療養所附属保育所に収容された子どもたちの人生
  • 福岡安則 著
  • 解放出版社3000円
ハンセン病患者たちが療養所に入れられると、子どもたちは家族から引き離されて附属の保育所や学校で育つ。年老いたかつての子どもたちから聞き取った苦難が本書に綴られている。保育園は通うのではなく、そこが寝泊まりする生活の場所。職員のいじめや差別に耐えてなお、学童にも重労働が課せられる。施設は自給自足を旨とするため、家畜を飼い、野菜を作る。畑を開墾し、重い肥え桶を担いで運び、採れた麦を石臼で挽くのも子どもたちの役目だ。感染を疑うかのように検査の注射を何度も打たれ、その跡が今も腕に残る。  患者家族たちが官憲に襲撃され、施設に強制収容される事件もあった。それは単なる収容ではなく、「強制隔離絶滅政策」として行われたもので、患者たち家族には子産み子育てといったリプロダクティブ・ライツを許さないという国家意志の現れだったと筆者は怒りを隠さない。(公)

宗教右派とフェミニズム

ポリタスTV 編 山口智美 斉藤正美 著

  • 宗教右派とフェミニズム
  • ポリタスTV 編 山口智美 斉藤正美 著
  • 青弓社1800円
元首相暗殺事件が露わにした日本の保守政治と宗教右派の深い結びつきは、多くの人々に衝撃を与えた。しかしその核心にジェンダーとセクシュアリティがあることはほとんど理解されていない。草の根右派運動を長年観察してきたフェミニスト研究者による本書は、1990年代のバックラッシュから今日に至る、性と家族をめぐる保守政治を膨大な情報で明らかにする。  夫婦別姓、「慰安婦」、性的マイノリティ、親学や官製婚活まで、幅広いイシューから浮かび上がるのは、たとえ表面では「女性活躍」が推進されるようになっても、性と生殖を支配する家父長政治の岩盤は揺らいでいないということだ。カルト宗教の異常なイデオロギーという見方は、それがまさに日本政治の主流の一部となってきたことを見失わせてしまう。トランスジェンダー叩きがはびこる現在、フェミニズムがバックラッシュに加わり家父長制を支える愚行を犯さないためにも、これまでの動きを確認しておく必要があるだろう。(も)

沖縄ともろさわようこ 女性解放の原点を求めて

  • 沖縄ともろさわようこ 女性解放の原点を求めて
  • 源啓美 河原千春 編 もろさわようこほか 著
  • 不二出版4500円
 女性史研究家・思想家のもろさわようこが半世紀、沖縄と関わりながら手がけてきた著作等から再録し、8人の寄稿も収録。戦後、一貫して「女性・部落・沖縄」といった周縁に目を向けてきたもろさわの「沖縄決定版」だ。  もろさわは、戦争加担と沖縄への加害性を帯びたヤマトの女として思索するなかで、数百年にわたる武力支配を非難、「祖国」と天皇制を批判してきた。本書では「『戦争への道』を許さない」「私と沖縄と女性史」などでそのエッセンスが読める。また、沖縄戦の証言録など被害の話を数多く収録するが、朝鮮人の虐殺など加害の記憶も含む。マイノリティの歴史が重なる地点で、当事者に加害性も生まれ得る構造を見抜いてきたもろさわと、編者の視点が光る。  「沖縄からは、この国の歪みがよく見える。見えるからこそ正すこともできる。沖縄にはその力がある」―先駆的なフェミニストの数々の至言を、この大著からぜひ見つけてほしい。(猫)
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