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ふぇみんの書評

男たちの部屋 韓国の「遊興店」とホモソーシャルな欲望

ファン・ユナ 著 森田智惠 訳

    男たちの部屋 韓国の「遊興店」とホモソーシャルな欲望
  • ファン・ユナ 著 森田智惠 訳
  • 平凡社2600円
「遊興店」は、店内の各小部屋で女性従事者が酒を飲み「接待」し、男たちを楽しませる空間。性売買被害者の支援相談の活動をしてきた著者が、女性従事者に取材した。遊興店でどのように男たちが「(異性愛者の)男性」を形成し、女性従事者への暴力や差別がなぜ非可視化されるのかを明らかにする。  「バーニングサン事件」(2018年)と「n番部屋事件」(20年)の凄まじい性暴力事件は知っていたが、各地の性売買密集地域が解体される一方で、遊興店やオンラインでなされる性的サービスの多様化や、頻繁に性暴力が起きても保護されない状況に驚く。男性客たちが女性従事者を蔑視し嫌悪し奴隷のように扱う事例は読むのもつらい。  収益をあげるシステムに女性差別や性役割が絡み、女性に対する暴力を市場化する資本主義家父長制社会の重要な場として性産業を問題視したことに大きな意義がある。「日本駐在員クラブ」もあるという。女性たちが声を上げ連帯する必要がある。(く)

リスペクト R・E・S・P・E・C・T

ブレイディみかこ 著

  • リスペクト R・E・S・P・E・C・T
  • ブレイディみかこ 著
  • 筑摩書房1450円
英国を「地べた」目線で伝え続ける著者による小説。そのモデルは、ロンドン五輪を機に貧者を追い出すジェントリフィケーション(都市の高級化)が進むロンドンで、ホームレス・シェルターを追い出されたシングルマザーたちが行った公営住宅占拠運動だ。  運動未経験のジェイド、ギャビー、シンディら若いシングルマザーたち(E15ロージズ)が、「少しばかりのリスペクト」と尊厳(バラ)を求めて立ち上がる。そこへかつてサッチャー時代に反緊縮運動の最先端にいたローズとかつての仲間も加わり、男社会の日本の大新聞のエリート駐在記者・史奈子と、史奈子の元恋人でアナーキストの幸太も巻き込んで、闘いが始まる―。  パンクのようなリズム感でぐいぐいと読むうち、誰もが力強く立ち上がる姿に打ち震える。占拠現場は暮らしの場であり、皆が持ち寄り分け合う新しい自治の場でもあった。泥臭くつながり、新しい世界を自らの手で作ることこそが変革の鍵だと教えてくれる。(暁)

生まれつき男社会に服従する女はいない

  • 生まれつき男社会に服従する女はいない
  • マノン・ガルシア 著 横山安由美 訳
  • みすず書房3500円
 フランスの気鋭のフェミニズム哲学研究者が、ボーヴォワールの『第二の性』や思想を手掛かりに、男に対する女の服従を哲学的に考察した意欲作である。  男性優位社会で予め他者として客体化され、服従こそが女の道徳・規範と刷り込まれる女たち。女自身が服従を得とみなしているため、再生産されてきた―と分析を展開する。なるほど。女にとって服従は積極的選択ではなく、自由を行使するための代償を免れて利益を享受したいという誘惑が生む「共犯型の服従」であるという。  服従の分析が人間解放の議論に役立つとする点は興味深く、『第二の性』が解放に向かって議論を結ぶ点とも共通する。「女を解放することは、男との関係を否定することではなく、女をその関係のなかにだけ閉じ込めないようにすることである」と綴ったボーヴォワール。服従からの解放もこれに当てはまるだろう。自由を行使し、自分の可能性を拓く先に広がる世界は間違いなく豊かなはずである。(春)
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