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ふぇみんの書評

占領下の女性たち 日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」

平井和子 著

    占領下の女性たち 日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」
  • 平井和子 著
  • 岩波書店3000円
戦中・引き揚げ時・戦後と、「守られるべき女性」に対して、「守られなくてよい」と、「差し出された」女性たちがいた。「慰安婦」や「特殊慰安施設協会(RAA)」の女性たちで、RAAでも満洲からの開拓団の引き揚げでも、男性たちが女性を「性の防波堤」と呼び、差異づけた。また、ソ連兵や米兵に女性が自ら身を差し出したとされ、異論は無視されてきた。  今も変わらぬこの社会構造と思考を、ジェンダー史研究者が本書で明らかにした。資料を掘り起こし、女性や当時の子どもの証言を聞き取って見えてきた社会像や女性像は、リアルで新しい。過酷な状況の下でも、家父長制の縛りの強い社会から主体的に飛び出して生きようとする女性の存在が著者の聞き取りで鮮明になり、強く印象に残る。  開拓団の少女、熱海市のRAAや赤線の女性たち、紙芝居に描かれた女性たちの生き生きとした姿…。著者の女性たちへのまなざしには共感が宿る。(三)

アンダイング 病を生きる女たちと生きのびられなかった女たちに捧ぐ抵抗の詩学

アン・ボイヤー 著 西山敦子 訳

  • アンダイング 病を生きる女たちと生きのびられなかった女たちに捧ぐ抵抗の詩学
  • アン・ボイヤー 著 西山敦子 訳
  • 里山社2800円
 米国の詩人である著者は、41歳でトリプルネガティブ乳がんに。告知、治療、ケア、死、時間、疲労、芸術、痛み…渦のように書き連ねられた言葉は「闘病記」ではない。自らを「死なずにまだ生きている者(アンダイング)」と位置づけ、ジェンダー化され、新自由主義的な昨今の「乳がん」文学と訣別し、「この世界のプロパガンダを広めるくらいなら、むしろ何ひとつ書かない方がましだ」と覚悟する抵抗の書だ。    裕福でないひとり親の著者は、がんをめぐるジェンダー・人種・階級差別、資本主義を看破し、娘(14歳)の言う「(著者を)病気にした世界」と「世界が世界にしてきたこと」を明らかにする。また乳がんで命を落とした女性作家らを呼び起こし、語ったこと・語らなかったことを蘇らせる。断片と断絶を積み重ねて、詩のように連ねられた言葉の力。あなたはどの言葉に惹かれるだろう?(黄)

女人短歌 小さなるものの芽生えを、女性から奪うことなかれ

  • 女人短歌 小さなるものの芽生えを、女性から奪うことなかれ
  • 濱田美枝子 著
  • 書肆侃侃房 2200円
 敗戦間もない1949年に女性たちだけで創刊された短歌誌「女人短歌」。創刊時の“なぜ女性だけなのか”の議論に始まり、4年後に創刊時の高らかな宣言文を一部改訂、その5年後に宣言文を削除、そして「余力を残して」の終刊(1997年・192号)など、その時々の社会に鋭敏に対応してきた。会員たちによる評論・研究の掲載はもちろん、歌壇の男性たちにも活発に論評を依頼。会員の歌集を毎月出版するなど、結社を超えた力強い活動を継続した。  作歌によって自己と社会に真摯に向き合う女性たちが、議論し合い、支え合い、内に籠ることなく社会に発信し続けた「女人短歌」は、本書にその語はなくとも、シスターフッドを体現していると思える。短歌の世界に疎い私でも、短歌史を垣間見、歌の力に心が揺さぶられた。教職を勤め上げた後に長年の関心事の研究を本格的に再開し、これほど充実した論文に仕上げた著者と、これを世に出した出版社に感謝する。(葉)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
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