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ふぇみんの書評

ヘイトをのりこえる教室 ともに生きるためのレッスン

風巻浩 金迅野 著

    ヘイトをのりこえる教室 ともに生きるためのレッスン
  • 風巻浩 金迅野 著
  • 大月書店1700円
高校教員や牧師という立場で若者と関わってきた著者らが、ヘイトや差別・いじめがどうして起きるのか、どうしたら止められるのかを自分の経験を元に語る書。読み手は、表紙のイラストのように、多様な人たちとゆったり車座で話を聞いている気持ちになる。  気づきは多い。かつて日本人が移民した先でヘイトに遭ったことからひも解き、排斥はどうして生まれるのかを考える。民族差別の根底には日本が植民地支配の謝罪や清算をしていないこと、公人によるヘイトが野放しなことも原因だと言う。歴史的には、同調圧力や権力への自発的服従も温床になると話す。  そこを超えるには―。話し合って自分が痛みを受けることを避けてはだめ。在日コリアンと韓国の高校生の交流を例にとり、対話することで既存の認識が壊れ、対立・差別にブレーキがかかる可能性があると語る。そして傍観者でなく、差別されている人の「アライ(味方)」になろうと説く。一歩を踏み出したい。(三)

明治のナイチンゲール 大関和物語

田中ひかる 著

  • 明治のナイチンゲール 大関和物語
  • 田中ひかる 著
  • 中央公論新社2100円
 家老の娘として幕末に生まれ、夫の妾問題と嫁役割に辟易して2人の子を連れて離婚、勉強して「賤業」とみなされていた「看護婦」になった大関和の生涯を描いた。自活の道を得ただけでなく和は、西欧医学が導入される中、衛生概念など先進的な知識に基づいた職業「看護婦」の教育・育成にあたり、国家資格に押し上げた。  大胆で情熱的、時に脆くて繊細な「つかみどころのない」和が、次々と道を切り拓いて看護婦の礎を築く様に心躍る。一方で富国強兵時代に、キリスト教信者でもあった和が陥る、現在にも通じる危うさも著者は見据える。それは「寡婦」で和と共に学び働いた盟友・鈴木雅とのやり取りで顕著になる。信仰上の奉仕の精神が低額の報酬を容認しないか、国家資格になることは国家介入や国策協力を招かないか、廃娼運動が娼妓たちへの蔑視の上に成り立っていないか―。  埋もれていた女の歴史を生き生きと蘇らせた本書。2人のシングルマザーの奮闘記でもあった。(明)

源氏手帖

長谷川春子 著

  • 源氏手帖
  • 長谷川春子 著
  • 共和国2700円
 『踊る女と八重桃の花』に続く、長谷川春子の戦中・戦後の画文集。文章も戯画も相変わらず軽妙だが、前書のように手放しでは楽しめない。従軍記者として戦時下の東アジアを視察し、“芸術家”の観察眼で現地の微細を活写するが、ほぼ占領者側の目線。大東亜共栄圏を無邪気に夢見る春子は、その稀有なおおらかさと活力が仇となったかと思えてしまう。  女性画家の活躍を期して結成した「女流美術家奉公隊」だったが、戦後はそれゆえ美術界から弾き出される。しかし「毒舌」の著述家としてはしばらく重宝され、それを本人も楽しんでいるように見える。終章の「源氏手帖」は、稚気を帯びつつ色鮮やかで美しい。晩年の春子は、源氏物語の世界に何を託したのだろう。  編者による「解説にかえて」が、真摯で胸に迫る。才気溢れ、女性の活躍を願った春子が持ちえなかったものは何か。誰もが「戦争加担者」になりうる現実のなかで考えたい。(葉)
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