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ふぇみんの書評

射精責任

ガブリエル・ブレア 著 村井理子 訳 齋藤圭介 解説

    射精責任
  • ガブリエル・ブレア 著 村井理子 訳 齋藤圭介 解説
  • 太田出版2000円
モルモン教徒で6人の子がいるプロチョイス派の米国人インフルエンサーが、男性政治家の中絶「政争」に激怒して、「望まない妊娠は男性が無責任に膣内射精をした時にのみ起こる」と63件の連続ツイートを投稿。それが大きな反響を招き、昨年中絶の権利を覆したドブス判決後に「中絶の議論を180度変える」本としてNYベストセラーに躍り出た。派手な装丁と「射精責任」の巨大ロゴの表紙に気圧されて未読の人には、無料で読める齋藤圭介氏のウェブ上の解説をまずはお薦めしたい。本書の真価がわかるはず。  1990年代に日本の男性学で論じられた「膣内射精暴力論」は少々説教臭かったが、ブレアは「女性の排卵と男性の射精」のメカニズムなど生物学的な非対称性と、科学的なデータに基づいて、射精のタイミングを「意志で決められる」のは男性当人しかいないのだから、「責任をもって射精せよ」と迫る。オオカミから人間に昇格させられた当の男が反論しにくい作りも秀逸。(つ)

未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄

花束書房 編

  • 未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄
  • 花束書房 編
  • 花束書房2300円
 日本の女性で初めて大学で法律を学び、世界的なジャーナリストとして活躍、晩年には飛行士資格も取った北村兼子(1903~31)と、社会主義の立場から婦人運動の理論的指導者として多くの著作を残し、後進育成にも務めた山川菊栄(1890~1980)。北村の著作の抄録と山川についての論考等からなる本書は、2人のフェミニストが、いかに今の私たちが直面する問題に通じる先見性と卓越性を持っていたのかを詳らかにする。  2人に親交などはなかったが、共通するのは、リプロダクティブヘルス・ライツの視点から避妊を説き、姦通罪や堕胎罪、結婚制度や女子教育を批判し、優生思想が常識の時代に異議を唱え、軍事主義に真っ向から反対したこと。 ユーモアたっぷりに鋭く迫る北村の言葉は痛快で力強く、女性同性愛を前面に書いた山川の翻訳本も感慨深い。  2人は変わり続けた。その道に繋がる私たちも鋭く思考し、前進しなければ。社会を自分を変えるため、共にあるために。(暁)

沖縄戦幻想小説集 夢幻王国

又吉栄喜 著

  • 沖縄戦幻想小説集 夢幻王国
  • 又吉栄喜 著
  • インパクト出版会1800円
 激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦の死者は20万人以上、住民4人に1人が命を落とした。沖縄に暮らし、沖縄を書く芥川賞作家が沖縄戦に真正面から向き合った本書は、ドキュメントで記せぬ感情の機微まで踏み込んだ新たな沖縄戦の“証言記録”に他ならない。  今世と死後の世界であるグソーのあわいを描いた「全滅の家」、不条理な生と死が交差する「兵の踊り」、運動会のリレーに戦争を重ねた「平和バトンリレー」、琉球王国滅亡から沖縄戦を照射する表題作の書き下ろし短編4作と既出掌編2作を収録。生者と死者が行き交う幻想的な物語ながらも生活のリアリティーが匂い立ち、伝統芸能を介して沖縄の死生観や風俗に迫る。  戦争は不条理で、歴史に名を残さない庶民がいつの世も犠牲になってきた。登場人物が抱える無数の問いは、読後に言葉にならぬ寂寥感として突きつけられる一方、不可解な人間の新たな可能性も示す。その希望に作家の魂振りを見る思いがした。(春)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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