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ふぇみんの書評

女たちが語る歴史 上=北海道・東北・上信越他篇―農漁村女性の記録 下=沖縄篇―うない〈女性〉の記録

川田文子 著

    女たちが語る歴史 上=北海道・東北・上信越他篇―農漁村女性の記録 下=沖縄篇―うない〈女性〉の記録
  • 川田文子 著
  • 「戦争と性」編集室 各2200円
 今年4月に亡くなった、日本軍「慰安婦」に関わる数多くの著作がある著者。本書は、1970~80年代の女性たちの話が収録された著書を再編集したもの。各地の農漁村を訪ね歩き、女性たちから聞き取った貴重な語りが生命力あふれる力強い筆致で書かれている。  自力で産む女性、間引きと子守歌の風習、衣服づくりは種をまき、糸を紡ぎ、布に織っていくところから始まるという衣生産の話、月の出る夜、浜で若い男女が出会う“毛遊び”という風習のある沖縄など、少し前の時代の驚くような話が興味深い。北海道アイヌ、満州移民、沖縄戦経験者、南洋からの引揚者などの壮絶な語りも綴られる。重労働の中、何度も妊娠・出産した“明治女”のたくましさや悲哀、生活の工夫、他者と助け合う温かさなど、今の私たちも知っておきたい暮らしがあった。「慰安婦」につながる、戦争の深層に迫る著者の姿勢にも強く心が動かされた。(よ)

韓国・基地村の米軍「慰安婦」 国家暴力を問う女性の声

国家暴力を問う女性の声』金貞子 証言、金賢善 編、秦花秀 訳・解説

  • 韓国・基地村の米軍「慰安婦」 国家暴力を問う女性の声
  • 国家暴力を問う女性の声』金貞子 証言、金賢善 編、秦花秀 訳・解説
  • 明石書店4000円
 在韓米軍基地周辺の、性売買関連の店が集まる「基地村」で働く女性たちを、韓国では米軍「慰安婦」と呼ぶ。日本軍「慰安婦」制度がそのまま韓国政府と米軍によって維持された。これは女性たちの人権問題だと、女性活動家や学生を中心に支援組織ができた。その一つ、「セウムト」で活動する編者が、かつて基地村で働いた金貞子さんと共に、基地村を旅して貞子さんの証言を採録した書。巻末の訳者の解説が詳しい。  驚くことに、貞子さんが働いたクラブや性病検査施設などが今も残る。貞子さんは巡りながら、死んだ同僚のこと、麻薬漬けになったことなど苦痛の日々を語る。語りの口調のまま綴られる証言が胸を打つ。  女性たちは、1950~80年代は韓米同盟の維持のためや、外貨を稼ぐ愛国行為だと教育された。今も米軍基地周辺に基地村は存在し、国は、彼女たちを利用したこの国家的暴力の責任を問われていない。「よく生きのびた」と言う貞子さんの言葉をかみしめる。(三)

「ものづくり」のジェンダー格差 フェミナイズされた手仕事の言説をめぐって

山崎明子 著

  • 「ものづくり」のジェンダー格差 フェミナイズされた手仕事の言説をめぐって
  • 山崎明子 著
  • 人文書院4500円
〈女〉の「ものづくり」が、その時々の「言説」によって称揚されたり貶められたりしてきたことを本書は明らかにする。不況期には内職で家計を助けよう、戦時は兵士への祈りと慰安のために、好況期には手芸で個性を発揮しようと、手仕事が女性に奨励された。一方で、主婦は「裁縫みたいなものに熱中」せず(有り余る時間は)文学・芸術や奉仕活動に精を出せ、と揶揄されもした。いずれも、女は「稼がなくてもよい」「低賃金でもよい」というジェンダーの枠内での語りだ。近年メディアが取り上げる伝統工芸界の女性職人についても、そうした枠と、「伝統」の枠を絡めて考察していて興味深い。  各章で祖母・母・私の記憶と重なり、胸が熱くなった。「手仕事を愛してやまない」著者は、ジェンダーの枠を外し、ものづくりのプロセスを大切にした言説がそこここに生まれることを期待しているのだろう。(葉)
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