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ふぇみんの書評

公教育で社会をつくる ほんとうの対話、ほんとうの自由

リヒテルズ直子、苫野一徳 著

    公教育で社会をつくる ほんとうの対話、ほんとうの自由
  • リヒテルズ直子、苫野一徳 著
  • 日本評論社1700円
画一的で一方的な学習、理不尽な校則、いじめなどの問題が山積する今の学校教育。「教育改革」も叫ばれて久しいが、何を、どこから、どう変えればいいのか―。  日本や欧米でも公教育制度が始まると、富国強兵や殖産興業に絡めとられたが、本来の構想に照らせば、その現代的な目的は、全ての人の「自由」と「自由な社会」の実現にあり、民主主義の担い手として対話力ある市民を養成することにあるという。しかし教員や保護者自身にそれができるのか。さらに学校は子ども、親、教員、地域の人みんなで作るものと。リヒテルズはオランダでの教育実践を紹介するが、本書は単にオランダの教育の礼賛にとどまらず、経産省事業の「ルールメイキング」プロジェクトや東京都杉並区での教育委員の選出法など、日本の各地での変革の萌芽を逃さない。「イノベーションの土台は多様性のある公正な公教育」という元教育官僚の話も興味深い。私たち一人一人の未来へのヒントに満ちた本だ。(州)

日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた

栖来ひかり 著

  • 日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた
  • 栖来ひかり 著
  • 書肆侃侃房 1600円
同性婚法制化、ジェンダーギャップ指数アジアトップ等々、現在の台湾は、隣の日本から見ると眩しい。一方で、中国からの圧力等、対外的状況は緊迫しているように見える。そうした台湾を、在住20年近い著者が、「複眼性をもってみつめ」たのが本書だ。  その時々の社会問題はもちろん、暮らしの中でのふとした関心などを話題に、今にいたる歴史や立場の異なる人々の思いも織り込んで、生き生きと語られる。特徴的なのは、若い世代の活躍だ。SNSでもリアルでも、若い人たちが活発に議論し行動している。その土壌はどのように育まれたのか。ファンタジーホラー映画から導かれた著者の言葉「きちんと歴史を見つめて反省できる勇敢な国には未来がある」は、危険な方向に進む日本との差異を端的に示している。  「『おもろい』が基準」(本書あとがき)で語られる隣国・台湾は、題名どおり、万華鏡を覗いたように多彩で活力があり、今の日本を顧みる示唆に富む。(葉)

ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所

関口竜平 著

  • ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所
  • 関口竜平 著
  • 大月書店1700円
人口が減るなかで本のネット購入が増え、書店の数はこの20年で半減したと報じられた。そんな状況に抗うかのように、千葉市の幕張という街に小さな本屋がある。店主は、ヘイト本や歴史修正本は「社会を壊」し、「人を殺す」からと、店の棚に置かないことにしている。店の名前は本屋lighthouse、ウェブサイトには「暗闇に迷うひとには足下を照らす光を/夢を抱くひとには果てなき道を照らすしるべとなる光を」と書かれている。本を売るだけではない。読書会やトークイベント、音楽ライブと、まさに灯台が光を投射するように店主は発信をし続けている。  店主は、本屋は本屋だけではつくれない、お客との共同作業でできると書く。本屋は、本と読者を結びつける場だが、お客が棚の本を選んで買っていくから、本屋は次の本を棚に並べられる。こうして棚が形成され、それが本屋をつくるからだ。ユートピアはどこにもないのか、どこかにあるのか、店主は探し続ける。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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