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ふぇみんの書評

性暴力を受けたわたしは、今日もその後を生きています。

池田鮎美 著

    性暴力を受けたわたしは、今日もその後を生きています。
  • 池田鮎美 著
  • 梨の木舎2000円
著者は言葉の人だ。多くの被害者や支援者が待ち望んでいた「不同意性交罪」を作るために、当事者による刑法改正ロビイング団体のメルマガで涙と血を流しながら綴り、法務大臣に宛て何度も意見書を送った。  ふたりで本を作ろうと約束をしていた親友を、10代で喪った。背景には性暴力があった。衝撃に崩れ落ちる。その後自身も性暴力とDVに遭う。死を目の前に置きながらも必至に抗い自分の言葉を絞り出して、「刑法を変えなければ」と思い続けた。性暴力被害の実態を理解しない警察や裁判官や検察とは言葉の闘いだった。著者の幼い娘2人が、残酷な夢を思い出し泣き崩れた母を心配しケアする姿と、その理由に心が痛む。性暴力の影響は想像以上に深刻だ。  しかし、著者はもがきながら言葉を掴み、ピアサポートグループや刑法改正に向けた活動を通して歩み続ける。「治療されるべきは被害者ではなく社会」。著者のメッセージをかみしめたい。(三)

台湾漫遊鉄道のふたり

楊双子 著 三浦裕子 訳

  • 台湾漫遊鉄道のふたり
  • 楊双子 著 三浦裕子 訳
  • 中央公論新社2000円
台湾発、1984年生まれの著者が1938年の日本統治下の台湾を舞台に、美食×鉄道×百合(女性同士の親密な関係)を描く小説。  結婚の圧力から逃げるように仕事で台湾に来た、日本人作家の千鶴子(モデルは林芙美子)と、決められた結婚を控えた台湾人通訳の王千鶴が、台湾縦貫鉄道で旅をする。好奇心旺盛で食いしん坊な千鶴子と料理上手な千鶴が鉄道で巡る、台湾の色鮮やかな風景、湯気や匂いまで香る台湾各地の屋台飯、料理、軽食、スイーツの数々、そして軽妙な会話。食べるごとに千鶴子は千鶴に甘やかで濃密な感情を抱くが、千鶴は心を開かない。なぜ? 二人の関係はどうなるのか―。最高に美味しいエンタメ小説でありながら、女性への抑圧や植民地支配が織りなす人間模様がぴりりと効いている。戦後を描く最終頁まで胸の高鳴りが止まらない。  著者がなぜあえて「百合」や日帝時代を描くのかの興味も尽きない。読後は訪問地や料理に関するTwitterもぜひチェック!(雨)

カメラを止めて書きます

ヤン ヨンヒ 著

  • カメラを止めて書きます
  • ヤン ヨンヒ 著
  • クオン2000円
 ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』で、自身の家族を描いてきたヤン ヨンヒ監督。本書は「映画に詰め込めなかった裏話を書いた」という。  監督の家族の物語は壮絶だ。朝鮮総連の活動家の父親は「帰国事業」で監督の兄3人を北朝鮮に送った。北に渡った一番上の兄は長い間精神を病み、心臓麻痺で急死する。母親は「済州島四・三事件」の体験者で、親族や婚約者を亡くしていた…。監督は家族が味わった悲しみや喜びを撮り続けた。家族への反発や葛藤、思いやりや愛情、さまざまな感情と共に家族を撮ってきたのは、「自分にまとわりついているモノの正体を知る必要」があり、「家族を撮るとは結局、自分が何から生まれたのかを掘り下げる行為」だと。とことん自分と家族を掘り下げながら、家族と社会を俯瞰し、個人と国家の関係を問う映画作品として昇華させてきた。ユーモアを忘れず前進する監督の姿に力づけられる。(ぱ)
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