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ふぇみんの書評

観光コースでない沖縄 第五版

新崎盛暉、謝花直美、松元剛、前泊博盛ほか 著

    観光コースでない沖縄 第五版
  • 新崎盛暉、謝花直美、松元剛、前泊博盛ほか 著
  • 高文研2400円
沖縄の慰霊の日(6.23)を前に本書を紹介したい。1970年代、新崎たちは基地と戦跡をめぐるフィールドワークを行い、沖縄観光に最大の戦争被害者である住民が排除されていると知って、40年前に初版が出版された。第5版は、沖縄の民意を蹴散らす現政権の強硬政策を背景に全面改訂された。過去には、95年の少女レイプ事件や「集団自決」の事実隠しに際しても改訂されている。  戦跡や基地、経済、自然、先島をトピックに、“日本にとって沖縄とは何か”は当初からの視点だ。振興予算はゼネコン経済で、県外企業がさらっていくこと。脱基地経済は進むが、辺野古を抱える名護市は基地依存が強化。宮古島は空襲で全島、形あるものを失ったにも関わらず、今、八重山などとともに軍事要塞化される理不尽が広がること。「世界遺産登録」は、政治と密接であること…。  総合的に沖縄を知るには良き入門書。もっと女性著者と女性視点があれば…。(三)

妾と愛人のフェミニズム 近・現代の一夫一婦の裏面史

石島亜由美 著

  • 妾と愛人のフェミニズム 近・現代の一夫一婦の裏面史
  • 石島亜由美 著
  • 青弓社2800円
のっけから刺激的だ。今は在野の研究者である著者は、結婚に価値を置く女性らから、「妻」の価値を押しつけられることに直面。フェミニズムによって「生き延びていられる」と感謝しつつ、なぜこれまで「妾」や「愛人」の研究がないのか、それは夫婦同権を目指してきたフェミニズムが「妻の視点」だからと喝破し、明治から現在の新聞・雑誌・文学作品などに基づき、「妾」「愛人」の視点から一夫一婦制の実態を曝く。  明治初めは「妾」に法的地位があったが、近代化政策で一夫一婦制が導入されると法的地位を喪失。富裕層男性の妾囲いは残ったが、1920年代から性・愛・結婚一致の恋愛結婚イデオロギーがもてはやされ、当初は恋愛する人を指した「愛人」が、戦時体制下で妻の役割が奨励されると、否定的なものに。戦後誰もが恋愛結婚をする中、愛人は「性」と家庭外のサポート役に-。結婚制度に暗に組み込まれたアクターに光を当てた著者の、次の夫研究も楽しみ。(琅)

ポスト・ヨーロッパ 共産主義後をどう生き抜くか

スラヴェンカ・ドラクリッチ 著 栃井裕美 訳

  • ポスト・ヨーロッパ 共産主義後をどう生き抜くか
  • スラヴェンカ・ドラクリッチ 著 栃井裕美 訳
  • 人文書院3000円
表紙から不機嫌そうにこちらを見つめるメガネの女の子。50年前にウクライナのリヴィウで撮られたこの写真は、歴史的文脈への理解を欠き、突然起きたように見える戦乱にうろたえているわたしたちを映し返しているようだ。  著者は30年前、共産主義の夢とともにユーゴスラヴィアというひとつの国が崩壊していく中で、人びとの苦悶と悲しみの声を書きとめた。彼女がいま目にしているのは、東欧の人びとにとってあれほどに自由と希望の象徴であった「ヨーロッパ」そのものがゆっくりと蝕まれている様子だ。経済格差がもたらす侮辱と失望、歴史の改ざんによる薄っぺらなプライドと移民の排斥…。人びとが単一のグローバル市場に放り込まれる一方、ナショナリズムによる分断が進む、かつて希望に満ちていたはずの「カフェ・ヨーロッパ」で、著者は見過ごされがちな日常の細部と、一人ひとりの人生に耳を傾ける。かつての女の子とともに、異なる未来へと想像を馳せながら。(も)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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