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ふぇみんの書評

女子サッカー140年史 闘いはピッチとその外にもあり

スザンヌ・ラック 著 実川元子 訳

    女子サッカー140年史 闘いはピッチとその外にもあり
  • スザンヌ・ラック 著 実川元子 訳
  • 白水社2900円
長い歴史を持つ英国女子サッカーを、選手や関係者の証言、報道資料を基にフェミニストの視点でジャーナリストが執筆。茨をかいくぐって今に至る道がサッカーのみならず女性の地位や政治も含めた背景と共に語られて、ストンと腑に落ちる。  これまでどんなスポーツも女の身体に合わないと冷笑を浴びてきたが、女子サッカーは第1次大戦で変わる。工場で働く若い女たちが余暇に始め、チームを作り、家にいるだけでは得られない興奮を知り、人気も博した。戦後は戦傷者の医療支援のため慈善試合で大金を寄付するなど活躍したが、なんと女子サッカー禁止令が! 停滞期も乗り越え、ワールドカップや女子リーグの創設、賃金も練習場所も支援も男女不平等なことに世界中の女子選手が声を上げ、#MeTooにも励まされて、今も発展中だ。  政治的発言はピッチで名を成した者の責任と、影響力を使って女性の権利獲得のため社会を変えようとする熱い思いが伝わる。(三)

小鹿島 賤国への旅

姜善奉 著 川口祥子 訳

  • 小鹿島 賤国への旅
  • 姜善奉 著 川口祥子 訳
  • 解放出版社2500円
1916年、日本は国内同様、植民地支配下の朝鮮半島の南にある小鹿島(ソロクト)に、ハンセン病患者を強制隔離する療養所を設置した。著者は解放後の8歳の時、ハンセン病患者の母とともに、この療養所に入れられた。62年に島を脱出して、その後、物乞いをしてお金を貯め、元患者と家族が暮らす「定着村」で医療活動を始めるまでを書いている。  療養所での過酷な生活、母親との別離、ハンセン病発病時の堪えがたい痛みや苦しみ、結婚、信仰などを、赤裸々に綴る。療養所で聞いた日帝時代の強制労働、暴力、人権侵害などに加え、日本人園長が殺害された事件、45年、療養所の職員らが80人超の患者を虐殺した事件にも触れている。  人々との交流や学問を学ぶ喜びなどに希望を見出しながら、壮絶な半生を生き延びた著者の力強さに胸を打たれる。植民地化の慣習が残る療養所の実態を詳細に記した本書は、貴重な証言として広く伝えられるべきと思う。(ん)

3.11 大津波の対策を邪魔した男たち

島崎邦彦 著

  • 3.11 大津波の対策を邪魔した男たち
  • 島崎邦彦 著
  • 青志社1400円
著者は1995~2012年、政府の地震調査研究推進本部の長期評価部会長を務めた。2002年7月、長期評価部会は「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」を取りまとめ、30年以内に20%の割合で三陸沖から房総沖のどこでも地震が起きる可能性を指摘した。著者は発表当時から不可解な圧力を感じるようになるが、「原子力ムラ」を補助線にして考えると、多くの疑問が氷解するという。  長期評価の警告に従って対策をすれば、災いは防げた。3.11大津波の被害も原発事故も防ぐことができたと著者は書く。しかし、対策をせずにすますのが東電の対策だったのだ。  本書には長期評価をめぐる著者の体験が詳しく描かれる。大事なことは声をあげること、広く声を伝えることだという。「原子力ムラ」の介入は今もある。多くの人が本書を手に取り、何が起こったのか、なぜそうなったのか知ってほしい。東電幹部に無罪判決を出した裁判官には必読の一冊だ。(ね)
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