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ふぇみんの書評

日本は本当に戦争に備えるのですか? 虚構の「有事」と真のリスク

岡野八代、志田陽子、布施祐仁ほか 著

    日本は本当に戦争に備えるのですか? 虚構の「有事」と真のリスク
  • 岡野八代、志田陽子、布施祐仁ほか 著
  • 大月書店1500円
昨年末に閣議決定のみで公表された「安保3文書」。戦後安全保障政策の大転換となる「3文書」について、「本気で戦争する準備を始めるのか」と鋭く問い、日本が追求すべき「リアリズム」を提示する。  前提とされる「切迫する台湾有事」は、米中の外交の歴史や両国と台湾の政治をつぶさに見れば政治家のプロパガンダであり、外交こそが台湾周辺の平和を構築してきた(布施)、想定される人的被害や、防衛費倍増は対米公約だと報じないメディア(望月衣塑子)、米国内に新たに生まれた「人間の安全保障」観と米国一辺倒でない外交ビジョン(三牧聖子)、安保法制での「存立危機事態」と3文書の「敵基地攻撃」が合わさった時に起きる事態と3文書が抱える憲法問題(志田)、武力に特化した安全保障でない、ケアを起点とした真の安全保障のための議論(岡野)―。  3文書は本当に日本に住む人を守れるのか。冷静で現実的な議論のために今こそ多くの人に読んでほしい。(孟)

民主主義のミカタ 宇野重規×岸本聡子

宇野重規、岸本聡子 著

  • 民主主義のミカタ 宇野重規×岸本聡子
  • 宇野重規、岸本聡子 著
  • 東京新聞1400円
東京都杉並区長の岸本聡子さんと、政治学者・宇野重規さんの対談が掲載された本書。民主主義や住民自治を2人がたっぷり語る。ロシアのウクライナ侵攻、安倍元首相の国葬・旧統一教会問題、防衛費増額など「2022年は歴史的な一年」で、日本も世界も民主主義の危機だと話す宇野さんの講演録、住民との対話を重視し、「市民参加型予算」の実現を目指す岸本さんのインタビュー録もある。  対談では2人とも日本での議論の少なさや市民の政治への当事者意識の低さに言及。しかし、議論するには市民が情報を十分に知らされていないとも。行政は、予算や今後の長期の人口推計など、情報をデジタル化して、アクセスしやすいようにすべきという意見に納得だ。  「自分なりに関わりたいと思っている社会が人間のエネルギーを引き出す」(宇野)、「地域の強さを発掘する」「民主主義の練習を地域からやっていく」(岸本)などに、選挙だけではない民主主義を進めるヒントや希望がみえる。(ゆ)

もの言う技術者たち 「現代技術史研究会」の七十年

平野恵嗣 著

  • もの言う技術者たち 「現代技術史研究会」の七十年
  • 平野恵嗣 著
  • 太郎次郎社エディタス2200円
これは科学・技術の功罪を知るゆえに、苦悩する技術者たちの戦後史だ。現代技術史研究会は1955年に発足、企業や官庁・大学に所属する技術者・研究者が組織の枠を超えて、技術のあるべき方向性を求めたグループだ。会員はペンネームで論文を発表し、その専門知識を市民運動に密かに提供することも多く、いわば「秘密結社」のような集団でもあった。  歴代のメンバーには、後に技術評論家となるリーダーの星野芳郎や、手弁当で水俣病を調査した宇井純、遺伝子組み換え技術に警鐘を鳴らし続ける天笠啓祐、東芝で原子炉設計を手掛け、3・11以後実名で発信を始めた後藤政志などが名を連ね、錚々たる「もの言う技術者」の姿が浮かび上がる。組織の中から環境汚染を告発しながらも、自らの加害者性に苦しむ技術者たちがいてこそ、科学・技術の健全な発展があるはず。今後もAI問題やPFAS汚染などの課題に、科学・技術のありようを注視する彼らのような存在は不可欠だ。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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