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ふぇみんの書評

宇宙のニュージーランド日記 なつかしい未来の国から

安積宇宙 著

    宇宙のニュージーランド日記 なつかしい未来の国から
  • 安積宇宙 著
  • ミツイパブリッシング1800円
本紙1面(2019年3月15日号)に登場し、母でピア(=同じ立場)カウンセラーの安積遊歩さんと、本紙に「遊歩と宇宙の公開ラブレター」を連載した著者、宇宙(うみ)さん。母と同じく生まれつき骨が弱い障害を持ち、福島原発事故後からはニュージーランドに移り住んだ。本書は、どこかなつかしく、それでいて女性、同性愛者、先住民などのマイノリティの権利保障などで先進的な未来の国での、日々のエッセイだ。  ダンスパーティー、寮やシェアルームでの暮らしや友人関係、専攻や将来への悩み、やっと得た仕事と永住権…著者の言葉はどこまでも率直で等身大。車椅子ユーザーとして、人に助けを求めることで、出会いもあれば葛藤もあり、学生会の選挙や政府による表彰では内実とのギャップに悩むことも。それでも出会いと対話をやめない著者が、一歩一歩自分を発見し、セクシュアリティやライフスタイルを手作りしていく道のりそのものが、一つの未来を指し示す。(傳)

裸で泳ぐ

伊藤詩織 著

  • 裸で泳ぐ
  • 伊藤詩織 著
  • 岩波書店1600円
2017年に著書『Black Box』で自身の性被害を客観的に記したのは、まだ心的外傷を言語化できるエネルギーも時間も不十分だったためと書く著者。その後、加害者や誹謗中傷してきた相手に対し複数の裁判を闘い、支援も広がって、「目を向けたくなかった心的外傷についての言葉を拾い集め」て回復の道のりをエッセイとして出版した。  著者の〈死ぬまでにやりたいことリスト〉の一つがタイトルの「裸で泳ぐ」こと。深夜、海に入ったときのことを、「優しいゆりかごの中にいて、満点の星の下、(…)被害者、ジャーナリスト、女、人間、ありとあらゆるラベルが水の中に溶けてしまう」と振り返る。怒りをたぎらせ、突然涙するような大きく揺れる心情の中、がっちりヨロイを着たり、あるいは信頼できる場でヨロイを脱ぐ。  性暴力被害者で、ジャーナリスト。どちらも自分。もがきながら、バラバラになった心をつなぎ戻す途上の姿に、読むのがつらくなるけれど、共感する。(三)

被害と加害のフェミニズム #MeToo以降を展望する

クォンキム・ヒョンヨン 編著 影本剛ほか 監訳

  • 被害と加害のフェミニズム #MeToo以降を展望する
  • クォンキム・ヒョンヨン 編著 影本剛ほか 監訳
  • 解放出版社2400円
#MeToo運動は韓国のフェミニズムに何を提起したのか。副題「#MeToo以降を展望する」のとおり、本書はその意義を踏まえ、運動が乗り越えた先を見据える。  編著者は、女性が持つ「被害者性」が政治利用され、女性運動が本来持つ社会改革への機会を失う恐れがある、と「被害者中心主義」が孕む危険性を訴えている。女性(に限らずマイノリティー)は被害者で弱い者だというイメージが、家父長制に優位性を与え分断を強いる。本書は全編を通じ、固定化された性の概念を時代背景や過去の闘いのなかで、どうやって打ち破っていくのかが語られる。男性中心社会が望まない言語を持つ堂々とした女性は、被害と加害を規定する「認識論的権力」を有し、過去の困難を捉え直すことで、自律的な生き方が選択できる。  私たちは被害当事者の声を取り上げ不当性を訴えることで、被害当事者を「保護の対象」と見なすことなく、「被害者という役割」に閉じ込めないようにするべきだ。(ぶ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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