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ふぇみんの書評

ヤジと民主主義

北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班 著

    ヤジと民主主義
  • 北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班 著
  • ころから1800円
 2019年に安倍元首相の演説中に起きた北海道道警によるヤジ排除事件と抗議行動、その後の「表現の自由侵害」での国家賠償請求訴訟と地裁勝利判決については本紙で既報だが、活動に熱心な読者は事の顛末を見守っていただろう。本書は、この事件を追い深めた数少ないメディアの一つ、北海道放送がギャラクシー賞を取った番組の取材ドキュメント。戦前に道内で起きた治安維持法事件とも結びつけ警鐘を鳴らし、今表現の自由を獲得しようとする芽を見つける。  中でもかつて道警の裏金問題を実名告発した、元道警幹部の原口宏二氏(故人)のインタビューは事件の核心を突く。特定秘密保護法、共謀罪、防犯カメラや通信傍受捜査が警察の権力を太らせ、「治安維持のためなら、多少のことはいいじゃないか」との風潮を作っていること。監視する機関(メディア、議会、公安委員会)の力が弱まっていること…。表現の自由を確実に得るには一人一人の不断の努力が必要だと再認識し、肝に銘じた。(鴻)

浮寝鳥

春日いと 著

  • 浮寝鳥
  • 春日いと 著
  • 田畑書店1800円
2020年11月、東京・渋谷区でホームレスの女性が殺された。元公務員の著者は彼女の死を知って、住まいを失った女性が行政の窓口に相談に来ていたらどんなやりとりが可能だっただろうかと思い描き、小説を書き始めたという。  河川敷の草むらでホームレス女性が殺された。女性は以前市役所の窓口に相談に来ていた十和子さんだった。市役所職員の永山くんは女性に生活保護の案内をしていたし、市議会議員の本田さんも、木下不動産の女性従業員も、十和子さんに関わっていた。十和子さんは役所の相談窓口で何度も傷ついていた。「扶養照会なんていやだ」「この人は私の話を信じていないんだ」と落胆する。周囲の人たちは自分ができることをしようとするけれど、十和子さんの気持ちを開くことも、助けることも、できなかった。そして彼女は…。  困難を抱えた人を放っておかず、どうしたら彼女は生きられたのか。実際の事件の重みと、問われる課題を改めて考える。(三)

「ルーツのある」子どもたち 民族学級という場所で

洪里奈 著

  • 「ルーツのある」子どもたち 民族学級という場所で
  • 洪里奈 著
  • クレイン2000円
朝鮮半島に「ルーツのある」子どもたちが、言葉・歴史・文化などを学ぶ「民族学級」。阪神教育闘争(1948年)を経て公立学校に設置された歴史を振り返り、民族講師の著者が経験を通して存在意義や展望を語り、興味深かった。  民族学級は、子どもたちが自分の根拠、「韓国・朝鮮にroots(根)がある」ことをしっかり実感として把握したうえで、これから歩む「routes(道)」をつくり出す場であるという。「ルーツがある」ことを肯定的に体験する場であるのだが、著者は「ルーツがある/ない」は、日本人とそれ以外の外国人を二分する言葉であることに注意を促す。「ルーツがある」という口当たりのよい言葉で、「日本人」が「在日韓国・朝鮮人」と名指される人々がなぜここで暮らし、差別されるのかを学ぶ機会を奪うとも指摘する。在日韓国・朝鮮人に「多文化共生」の代表の役割を押し付けつつ、差別する日本社会。本書は「ルーツがない人」に(こそ)読まれるべき本と思った。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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