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ふぇみんの書評

布団の中から蜂起せよ アナーカ・フェミニズムのための断章

高島鈴 著

    布団の中から蜂起せよ アナーカ・フェミニズムのための断章
  • 高島鈴 著
  • 人文書院2000円
  大正時代のアナキスト・金子文子に出会い、天皇制、国家、資本主義、家父長制等あらゆる権力を否定する、アナーカ・フェミニストになった著者が、「自分の足跡、自分の視界を、めちゃくちゃなままでもいいから公に曝け出してみたかった」というエッセイ集。  自己啓発のような「口当たりのよいフェミニズム」はそこにはない。コロナ禍でうつ、統合失調症を患った著者が、たとえ追い詰められて布団から起き上がれないとしても、その全存在を肯定し、「あなたの意志ひとつで蜂起に参画できる」と呼びかける。「首にかかった手を外して、ゆっくりと社会に向かって拳を握り直そうではないか」と。  「殺してやる」という言葉しか浮かばない日々の中で、迷い、戸惑い、もがきながら、「餌を備蓄するスズメバチのように」噛み砕いて成形した著者の言葉は、まるで弾丸のよう。そして著者は「シスター」と呼びかけ、手を伸ばす。私はその手を握り、いつの間にか「生へ扇動」されていた。(官)

フリチョフ・ナンセン 極北探検家から「難民の父」へ

新垣修 著

  • フリチョフ・ナンセン 極北探検家から「難民の父」へ
  • 新垣修 著
  • 太郎次郎社エディタス2400円
 19世紀末の極北探検で著名なナンセン。幅広い学識に加え、スキー等のアウトドア体験で培った強靱な肉体、“前へ”を意味する斬新なアイディアの探検船フラム号がそれを支えた。  しかし、彼が駐英ノルウェー大使や国際連盟の難民高等弁務官を務めたことを知る人は少ない。第1次大戦後の捕虜交換のために、旅券のない捕虜に「ナンセン・パスポート」と呼ばれることになる証明書を発行、40万人以上を帰国させた。ロシア革命に起因するウクライナ飢饉では、難民救済のための多国籍の援助機関から全権代表を要請されたのだった。動物学や海洋学の学者だった彼が、なぜ政治の世界に踏み込んだのであろうか。  毅然とした倫理観、学識と行動力、誰からも信頼され、誰をも納得させてしまう人物。そのカリスマ性は、彼の持つ人間性に由来するものに違いない。「リベラルアーツ人」と著者が書く彼の生涯を追うことで、人間を育てるために何が必要であるか見えてくる。(た)

ジャーナリスト 与謝野晶子

松村由利子 著

  • ジャーナリスト 与謝野晶子
  • 松村由利子 著
  • 短歌研究社2500円
与謝野晶子についての書籍は数多あるが、本書は晶子の「評論」の先見性に注目する。「母性保護論争」ではリプロダクティブ・ヘルス/ライツに、「労働」についての論はアンペイド・ワークやケア・ワークに、そして「対価のために働く必要がなくなる社会」はベーシックインカムに、それぞれつながると著者はいう。それを念頭に読み返すと、これらのカタカナ語の意味する事柄が、晶子の言葉によって、より鮮明に感じられることに驚く。  歌人であり元新聞記者でもある著者は、晶子の言葉にどんなときにも勇気づけられたという。いま「民主主義の根幹が揺さぶられ」ているとの危機感から書かれた本書は、平易な文体、さりげなく添えられる解説など、読者への細やかな配慮が感じられる。  当時から、晶子が思い描くのは「理想社会」だとされたが、理想が失われた世の中にしてはならない。それを多くの人に伝えたいという著者の熱い思いに、今度は読者が力づけられるだろう。(葉)
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