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ふぇみんの書評

レイプは本当に犯罪ですか?

ミシェル・バウドラー 著 竹内要江 訳

    レイプは本当に犯罪ですか?
  • ミシェル・バウドラー 著 竹内要江 訳
  • 柏書房2600円
 1984年に、公衆衛生の専門家の著者は米国ボストンの自宅でレイプされた。その事件を基に、この挑発的タイトルの書を記した。事件後始まった「被害者としての生活」。レイプの証拠採取や警察の2次加害、母や同性パートナーへの告白、進まない捜査への苛立ちと告発、職業人として性暴力の問題に取り組む。長期にわたる、怒りや心の揺れ、行動が綴られる。  誰かが自分をジャッジしていると思う心理、望む理解が周囲から得られないこと、仕事を諦めざるをえなかった事情…。押し寄せる息苦しさに言葉がない。そして著者を打ちのめしたのは、2007年に発覚した大量のレイプキット未処理事件だった。捜査当局がレイプを軽視し、矮小化する証拠だ。  被害者にだけ声をあげさせていいのか。2次加害を野放しにさせず、レイプ被害を沈黙させる状況を拒否し、「犯罪だ」と言い続ける列に加わって、司法・捜査機関はもとより、社会のさらなる変化を求めたい。(三)

イタリア料理の誕生

キャロル・ヘルストスキー 著 小田原琳ほか 訳

  • イタリア料理の誕生
  • キャロル・ヘルストスキー 著 小田原琳ほか 訳
  • 人文書院3400円
本書は、「政治」が「食」に与えた影響について統一(1861年)以降のイタリアを対象に研究したもの。食に関連する公文書や調査・栄養学などの文献が主な資料なので味気ない論文かと思いきや、小麦の値上げに抗議する何百人もの女性たちにうろたえる市長の様子や、価格統制に抵抗する製粉組合のストライキの光景まで記録から浮かび上がるので、絵巻物を見るようで飽きない。時の政府方針に好都合の研究結果だけを示す御用学者がどの時代にもいて、ファシスト政権もそれを大いに利用したという。いまへの戒めと思う。  今日の豊かなイタリア料理なるものが、じつはこの数十年の間に創られたものだという序文から驚かされる。19~20世紀、戦争と政治に翻弄されて慎ましい食事を強いられたが、それが第2次大戦後のアメリカナイゼーションに染まらず、いまスローフードの発信地になっていることにつなぐエピローグまで、「歴史」を知る面白さを満喫できる。(葉)

女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。

浜野佐知 著

  • 女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。
  • 浜野佐知 著
  • ころから2600円
映画監督への道が「大卒男子」にしかない1970年代から、ピンク映画と一般映画で300本超を制作してきた著者。本書は映画制作への情熱と、男社会との格闘がぎっしり綴られた「戦記」だ。  ピンク映画でしか監督になる道がなく飛び込んだが、凄まじいパワハラ、セクハラ、女性蔑視の現場の中で、「女の性を女の手に取り戻す」と撮り続け、制作会社を立ち上げる。それでも女性監督として認められていないことを知り、一般映画にも挑戦。作家・尾崎翠を男性評論家の偏見から解放して生き生きと蘇らせ、『百合祭』等で高齢女性の豊かな性を描くと、世界中の女性に歓迎された。「痴漢」映画の記述には首肯できないが、本書を貫く、女の性と生を解き放って描くという強い思いと「フィルムと共に生きて来た」映画人としての矜持こそ受けとりたい。それは私たちをどこまでも強く自由にする。(孟)
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