WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

しかし語らねばならない 女・底辺・社会運動

郡山吉江 著 下平尾直 編

    しかし語らねばならない 女・底辺・社会運動
  • 郡山吉江 著 下平尾直 編
  • 共和国2600円
著者の郡山吉江さんは元気な人だった。1907年、仙台市に生まれ、プロレタリア詩を通じて、詩人郡山弘史と出会い結婚。2児を産む。戦後日本共産党に入党(50年除名)。上京以降、ニコヨン(日雇い)として30年間働き、60年代後半から弾圧に対する救援活動、三里塚闘争、リブ運動等の社会運動に関わる。婦人民主クラブ(現・ふぇみん)創立以来の会員で、初代仙台支部長だった。  晩年に『三里塚野戦病院日記』『冬の雑草』『ニコヨン歳時記』を書く。没後40年、彼女の歩みをたどることで底辺からの視座を引き継ぎたいと、運動体の機関紙等に書いた文章を編者が集め、本書が刊行された。テーマ性の強い前3冊に比べ、より彼女の肉声に近い。  編者の選んだ文章は、どれも彼女の実人生と経験に根ざして書かれており、感銘深い。とりわけ印象深いのは、ともに泥にまみれて働いてきたニコヨン仲間の女性たちの姿だ。田中美津さんの追悼文も泣かせる。(晶)

兎の島

エルビラ・ナバロ 著 宮﨑真紀 訳

  • 兎の島
  • エルビラ・ナバロ 著 宮﨑真紀 訳
  • 国書刊行会3200円
 スペイン・ホラーの短編小説集。  彼が島に放した兎が繁殖したその結末は…。耳から垂れる肢がだんだん長くなって、揺れ動く…。 焦げた茄子の臭いがするおばあちゃんが、空中に浮かんでいる…。どうしても辿り着けない場所が表すものは…。死んだ母親から届いたフェイスブックの〈友だち申請〉から目が離せない…。彼の口から洩れる腐った臭いとは…。他人の夢を〈受信〉してしまう彼女…。  非日常な不安で不穏な感覚が、小さな波のように寄せてきて、ホラー感が高まる。ごく普通に暮らしているように見える人も、隠し事や恐怖感に苛まれているのではないか。そう思わせるような、ヒタヒタと迫る底知れぬ不安感に、人は離れられなくなる、さらに読みたくなる。読み手の内側を侵食するような感覚や、強烈な視覚的・臭覚的印象を読後に残すシュールさに、虜になってしまう。  上質な手触りの装丁にほれぼれする。プレゼントや自分へのご褒美にいかが。(三)

遺伝学者、レイシストに反論する 差別と偏見を止めるために知っておきたい人種のこと

アダム・ラザフォード 著 小林由香利 訳

  • 遺伝学者、レイシストに反論する 差別と偏見を止めるために知っておきたい人種のこと
  • アダム・ラザフォード 著 小林由香利 訳
  • フィルムアート社2000円
世界には人種差別があふれている。特定の人種への暴力・暴言といったものだけでなく、黒人は身体能力が高い、ユダヤ人は知能が優れている…というような偏見も存在する。本書は、肌の色、祖先(純血性)、身体能力、知能の分野で、遺伝学からわかること・わからないことを解説している。  遺伝学者であり、科学番組の案内役も務め、イギリス人とインド人のミックスという著者の文章はわかりやすく、説得力がある。遺伝学が人間を分類する試み(白人を特別視など)や差別を制度化するために用いられた歴史を紹介し、結論として、個人間・集団間の人間は差異があるが、人種という概念は疑似科学的だとする。肌の色は多様性があり幅広く、その多様性は何十万年もの間そうだったことがわかっているという。  遺伝子研究が巨大ビジネス化する今、あらゆる差別に結び付けられないよう注視もしたい。(ゆ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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