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ふぇみんの書評

日本の中絶

塚原久美 著

    日本の中絶
  • 塚原久美 著
  • 筑摩書房900円
日本における中絶の歴史、法的・医療的・社会的課題、他国との比較など、中絶について幅広く書かれた本書。明治時代につくられた堕胎罪が現在も残り、配偶者同意が必要なこと、世界の多くの国で経口中絶薬が使われているのに、日本では掻爬法という外科手術が今も多いことなど、日本の中絶事情は世界からとんでもなく遅れていることにあらためて憤慨する。 掻爬法/術が、自由診療のため高額で、病院経営には大きな儲けになることを知り、女性の体より経済を優先する日本の医療や国のあり方に怒りがわく。掻爬する医師の必携書には、医師の裁量権や胎児の尊厳はあっても、妊娠した女性の健康や権利には触れてないという。水子供養が象徴するように、中絶には負の烙印を押し、女性たちを黙らせ、まるで懲罰的に心身に痛みを負わせる手術を行ってきたとさえ思える。堕胎罪撤廃や安全な中絶の権利を求める女性たちの運動で、状況が少し動いていることが希望だ。(う)

トランスジェンダー問題 議論は正義のために

ショーン・フェイ 著 高井ゆと里 訳 清水晶子 解説

  • トランスジェンダー問題 議論は正義のために
  • ショーン・フェイ 著 高井ゆと里 訳 清水晶子 解説
  • 明石書店2000円
 日本でも近年はフェミニストによるトランスジェンダー排除の言説が増えている。本書は英国のトランス女性である著者が、多くのトランスの人々の経験を元に、社会のトランスフォビア(憎悪)がどのように生み出されたのか、そしてこれまで不可視化され矮小化され歪曲されてきた、トランスの人々の社会的、経済的、医療的、身体的、精神的、階級的問題を詳らかにした貴重な書だ。  著者の眼差しはトランス内部の階層の複合性・交差性をも捉える。トランス女性へのミソジニー、トランス男性の立場の脆弱性、移民、有色人種、セックスワーカー…。トランスの問題は「ニッチな問題」でなく、ましてフェミニズムに「包摂してあげる」問題でもない。家父長制、資本主義、国家主義の暴力に連帯し立ち上がるために、私たちは「ともにある」のだ。  英国の本だが、トランス排除勢力の目的や日本の状況との符号について清水と訳者の解説が秀逸。今こそ皆で共有したい。(唐)

踊る菩薩 ストリッパー・一条さゆりとその時代

小倉孝保 著

  • 踊る菩薩 ストリッパー・一条さゆりとその時代
  • 小倉孝保 著
  • 講談社2000円
一条さゆりの名に、ある年代の人は聞き覚えがあるだろう。1960年代にストリッパーとして名を成し、72年に引退。社会が安保闘争や沖縄復帰、労働運動などで燃えた時代だった。新聞記者の著者は、一条を97年に死去するまで追う。前段は人を喜ばせた華やかな日々を、資料や聞き書きで描く。晩年は酒に溺れ、病気や事故に悩む一条に、大阪のドヤで話を聞いている。  多くの挿話が紹介されるが、印象的なのは公然わいせつ罪に何度も問われた一条を、周囲は〈反権力の人〉として取りあげたこと。その一条を、ウーマンリブの女性たちが「踏んづけられた女性」だと語ったと著者は言う。女性たちは一条の裁判も支援した。とはいえ、本人はそんな評価にとまどい、ひたすら踊りに励み、社会情勢への関心は薄かったようだ。  一条とは、著者も含め男性が描きたがる女性なのだろう。だが、他人にどう言われようと一本筋の通った生き方をした彼女に、私は惹かれるものがある。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
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