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ふぇみんの書評

歴史の中の多様な「性」 日本とアジア 変幻するセクシュアリティ

三橋順子 著

    歴史の中の多様な「性」 日本とアジア 変幻するセクシュアリティ
  • 三橋順子 著
  • 岩波書店3100円
性的多様性の承認が日本でも社会的テーマとなってきたのはこの10年ほどのことだが、歴史をたどれば、性的少数者は祭祀や芸能などの分野で一定の社会的・文化的役割を果たしてきたという。トランスジェンダーゆえに歴史学会から排除された“おかげ”で「学問領域にとらわれない思考と研究の自由を得た」という著者は、ヤマトタケルの時代からマツコ・デラックスまで、ヨーロッパからインド・中国・朝鮮半島まで、民俗学や地理学の手法も駆使して縦横無尽に「性」の多様性を検証する。  ただ多様な「性」といっても、可視化されているのは、日本の歴史の中では「男色」など「男・男」の関係であり、現代のトランスジェンダーでも「男→女」が圧倒的に多いという点を、著者は見落とさない。  「つまり、女性が発信主体であることは想定されていない」と指摘する第10章「レズビアンの隠蔽」は、著者の公平で誠実な姿勢が特に鮮明に読み取れる。(葉)

ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ

チェ・ジウン 著 オ・ヨンア 訳

  • ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ
  • チェ・ジウン 著 オ・ヨンア 訳
  • 晶文社1800円
  著者は言う。「結婚が出産と同義語と見なされ、子どものいない結婚生活は不完全なものと認識され、子どもを望んでいないというと血も涙もない自分勝手な女扱いされる韓国社会」と。その韓国で著者と同じように子どもを望まない既婚女性17人に取材し、望まない理由、悩みや幸せ、女性の人生や韓国社会を考察した。  望まない理由は仕事や経済的不安などさまざまだが、人に納得されることは少なく、親や世間から説教される。日本より出生率が低い韓国は“産め圧力”が強いと思うが、書かれていることは日本にもあり、子育て女性に冷たい社会なのも一緒だ。家父長制・家族主義が強い社会では女性たちは生きづらい。  ミソジニー社会、女性が人間として尊重されず、弱者が平等な権利を享受できない社会を告発するが、語りは軽妙でポジティブな子なし人生を提示。女性の多様な生き方を模索する好書だ。(ん)

言葉を手がかりに 見ること、伝えること、考えること

永井愛、上西充子 著

  • 言葉を手がかりに 見ること、伝えること、考えること
  • 永井愛、上西充子 著
  • 集英社1600円
 日本のジャーナリズムを問う戯曲「ザ・空気」(3部作)などで社会問題に切り込む劇作家の永井愛さんと、閣僚や官僚の国会答弁を観察し、「国会パブリックビューイング」を始めた上西充子さん(法政大学教員)。そんな2人が政治や報道をとことん語り合う。  〈ぶら下がり〉や〈オフレコ〉は、「記者を操作するための場でしかない」と、報道現場の姿を問う。安倍・菅の元首相を演出や演技の観点から読むと、本人の心理がわかると分析するのが新鮮だ。国会答弁を〈丁寧に〉観察すると見えてくる異様さを、読まずに食べた「やぎさん答弁」や、ごまかしを指摘する「ご飯論法」と名付けて際立たせる。国会に通ってテレビに映らない表情や行動に注目する…。最も頷くのが「呪いの言葉」だ。「他に代わる人がいない」「もっと重要なことがある」など、思考停止させる言葉から、私たちはどう脱するか。  非常識を衆目に曝し、はぐらかしを見抜く力を高めて、政治にモノ申していかなくては。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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