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ふぇみんの書評

フェミニスト・キルジョイ フェミニズムを生きるということ

サラ・アーメッド 著 飯田麻結 訳

    フェミニスト・キルジョイ フェミニズムを生きるということ
  • サラ・アーメッド 著 飯田麻結 訳
  • 人文書院4500円
フェミニスト・キルジョイ、それは、家族の食卓や同僚たちの談笑の場に突然現れて、性差別や人種差別の問題を指摘し、楽しみを台無しにしてしまう存在だ。そこにある問題について口を開けば、自分自身が問題のある存在になってしまう。そのような壁にぶつかる経験を考察し、「個人的なことは政治的なこと」というフェミニズムの命題を生きるとはどういうことかを問い直そうとする本だ。  巻末には「キルジョイ宣言」や「サバイバル・キット」も載っていて、一見、わきまえないキルジョイになろうと明快に呼びかけ励ますための本に見える。だが実際には、著者の語り口はとても注意深く繊細だ。突き出されたわがままな腕や、ぷつんと切れる瞬間という比喩を通して、読者はむしろ、それぞれの経験に埋もれていた痛みや苦しさの瞬間をたどりなおし深く内省するように促されるだろう。揺らぎや痛みとともに結果を引き受けることは、フェミニストの人生の一部なのだ。(も)

海を渡り、そしてまた海を渡った

河内美穂 著

  • 海を渡り、そしてまた海を渡った
  • 河内美穂 著
  • 現代書館1800円
 本小説は中国・興安嶺で育ち、日本に渡った残留邦人3世代の女性の物語。戦争後、満洲に置き去りにされた王春連、娘の蒼紅梅、孫の楊柳が、興安嶺を回顧し、日本での現在の生活を語る。  中国東北部の美しい景色やさまざまな民族が豊かに描写され、それと共に日本の植民地化と戦争、文化大革命が吹き荒れた中国、朝鮮戦争の傷痕が記される。国家によって翻弄され、棄てられた市井の人々の悲しみ。中国では「日本鬼子」やスパイと言われ、日本では「中国人」といじめられ、何度も差別される残留邦人とその家族たち。彼女たちが背負った苛酷な体験。それを乗り越え力強く生きる人々を活写する。本紙に何度か寄稿してくれた著者の、豊富な取材に裏打ちされた内容の濃い小説だ。  アジアに対する蔑視・ヘイトが続く日本で、私たちが知るべき歴史・記憶の数々が胸に迫ってくる。だが、文体は柔らかで温かい。登場人物の繊細な語りに涙がこぼれるほど感情が揺さぶられた。(く)

沈黙の記憶1948年 砲弾の島 伊江島米軍LCT爆発事件

謝花直美 著

  • 沈黙の記憶1948年 砲弾の島 伊江島米軍LCT爆発事件
  • 謝花直美 著
  • インパクト出版会1800円
伊江島米軍LCT爆発事件は、沖縄に詳しい人にもあまり知られていない。沖縄戦後最多の犠牲者を出しながら、新聞記事もわずか7行程度でまとめられてしまう。  1948年8月6日の夕刻、砲弾を積んだ米軍弾薬処理船(LCT)が爆発。伊江島の浜へ着岸した定期船の乗客や、近くにいた人たちが巻き込まれ、米軍事故調査報告書によると100人超が死亡、大勢が重軽傷を負った事件だ。沖縄戦を生き延び、戦後は米軍に土地を接収された伊江島の人たちがようやく島に戻り、生活を再建しようとした矢先だった。生き残った人や家族も生活困窮などに苦しんだ。補償を求める陳情が続いたが、日本政府からはわずかの見舞金が出ただけだった。  沖縄タイムス記者として7行の記事に疑問を持ち、戦前・戦中・戦後の伊江島の人々の証言と資料をもとに仕上げた渾身の一冊。米軍が残した不発弾による事故も沖縄各地で戦後数多く起きていたことを知り、愕然とする。(室)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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