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ふぇみんの書評

遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録

石井美保 著

    遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録
  • 石井美保 著
  • 岩波書店2700円
小学校のプール事故で娘を亡くした両親の思いと、二人に寄り添い続けた人々の記録。民事裁判、第三者委員会による現場での再現検証、自主検証としての再度の再現実験等を経て、案の定、学校組織の硬直性や教師の多忙など諸々の問題が明らかになる。  だが、本書の大きな特徴は、関係者へのインタビューを「証言」ではなく個々人の「語り」として記録していること。同じ学校の保護者として関わった著者は文化人類学者であり、そこに学問的洞察も加え、幼い子どもの事故死を、家族や周囲・社会がどう受け止めどう悼むことができるのかを探る。  「善意」の追悼行事や再発防止マニュアル作成などの「回復の物語」に置き去りにされる両親が迷い悩みながらも抱く、「組織としてではなく自分の言葉で」語ってほしいとの思い。それが各人の思考を深め、ひいては組織や社会が責任を負う第一歩になるとされる道筋には、告発書や論文等とは異なる深い感動がある。(葉)

シモーヌ VOL.6 インターネットとフェミニズム

シモーヌ編集部 編

  • シモーヌ VOL.6 インターネットとフェミニズム
  • シモーヌ編集部 編
  • 現代書館1500円
 #MeTooや#KuTooをはじめ、それまで声を奪われてきた苦しみがSNSによって可視化し共感が広がるなど、近年の第4波フェミニズムはインターネットなしでは語れない。本書はIT技術誕生から始まり、さまざまな識者がフェミニズムの視点から多角的にネットを論じた、他にはない一冊だ。  副題に「私たちの空間を守る」とあるように、目玉の1つはネットやSNS上の差別とオンラインハラスメント、特にモノ言う女性やマイノリティー、トランスジェンダー差別だ。堀あきこ、李琴峰らは、「ネットを見なければいい」が通用せず差別が現実社会にあふれ出る様を示し、仏の実態調査報告では、被害の深刻度が明らかに。それはマイノリティーの「自己検閲」や「撤退」をもたらす。対策にも本書は踏み込む。今無策の日本で策定すべき法制度、ネット上の情報の質を変えていくための取り組み、差別に加担しないためのリテラシー…。既存の女性運動、人権運動の動きが鈍いことも一因だろう。(瀚)

戦争抵抗の倫理 大戦期アメリカの良心的戦争拒否者たち

師井勇一 著

  • 戦争抵抗の倫理 大戦期アメリカの良心的戦争拒否者たち
  • 師井勇一 著
  • 大月書店3200円
日米開戦の前年、米国で兵役を拒否する運動が起きた。戦闘員となることの拒否、医療部隊を含む軍務全般の拒否、徴兵登録や代替奉仕活動までの拒否など、良心的兵役拒否にもいくつかの段階と形態があるが、兵役が合法的なものである以上、これらは国家の権威と正当性への挑戦と見なされ、社会の中には、義務を果たさずに権利にタダ乗りするだけと受けとめる者も出てくる。戦争に抗う、それは戦争を遂行しようとする国家権力および社会との闘いなのである。  本書は米国における事例を元にしており、キリスト教徒としての内心の自由と国民の責務の整合性、人は何に仕えるものであるかという根源的な問いがある。同時期、日本のキリスト教会は進んで大政翼賛制度に組み込まれていった。道徳心ゆえの戦争非協力と、戦争遂行のための国家による道徳教育の対立。各章で詳細な事例紹介、分析と解説が展開されるが、とりわけ序章と終章は重要で、現代にもつながる。(た)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
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