WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

親密なる帝国 朝鮮と日本の協力、そして植民地近代性

ナヨン・エィミー・クォン 著 永岡崇 監訳

    親密なる帝国 朝鮮と日本の協力、そして植民地近代性
  • ナヨン・エィミー・クォン 著 永岡崇 監訳
  • 人文書院4500円
戦後の日本で忘れられた作家たちがいた。李光洙、金史良、張赫宙、姜敬愛…植民地末期に活躍した、植民地朝鮮出身の作家と作品は、韓国と北朝鮮では、「対日協力/抵抗」の二分法的論理に基づき評価されてきた。本書は、彼・彼女らの主に日本語作品を二分法的解釈を超えて分析し、「朝鮮と日本において、被植民者と植民者とのあいだで共有され、否認された難問」に挑戦した、ポストコロニアル研究だ。  帝国の政策による検閲・プロパガンダが跋扈し、植民地同一化や差異化が生産・消費された。その中で、エキゾチックを要求する側と、被植民地の苦境の表現を要求する側との間で引き裂かれ、作家としての欲求も揺れ動いたバイリンガル文学者たちの複雑性を、丁寧に読み解いている。当時の作家たちの文学批評や座談会から、西洋からの遅れの認識や、被植民者への傲慢さ・暴力性も指摘。多様な観点からの丹念な考察は有意義と感じるし、文学史としても興味深い。(り)

エトセトラ VOL.7 くぐりぬけて見つけた場所

いちむらみさこ 責任編集

  • エトセトラ VOL.7 くぐりぬけて見つけた場所
  • いちむらみさこ 責任編集
  • エトセトラブックス1400円
ホームレスが寝られないよう中央に肘掛けのある「排除ベンチ」やジェントリフィケーション…暮らしや私たちの心身が、家父長制、新自由主義、軍事主義に絡めとられている中、私たちはどう生きるのか。公園で暮らし、女性ホームレスグループを主宰する、いちむら責任編集のフェミ雑誌では、さまざまな困難をくぐり抜け、創造力を発揮して実践された「抵抗とケアの取り組みがおりなすサバイブの場所」を紹介。  亡くなった女性ホームレス小山さんの「ノート」、都市につくる庭や畑、刺繍、ジェンダークイアや依存症のスペース…。ブラジルのスクウォット(ビル占拠運動)や、移動ワゴン車でスクウォットするドイツの活動家たちの話が興味深い。前者はシングルマザーや子どもが安心して暮らせるよう、後者は“声の大きい”者が支配しないよう民主的にルールを作る。  「誰も殺すな。自分も殺すな」。命を取り戻す場所を作ろう。私たちは生きられる。(張)

生きづらさに向き合うこども 絆よりゆるやかにつながろう

平井美津子 著

  • 生きづらさに向き合うこども 絆よりゆるやかにつながろう
  • 平井美津子 著
  • 日本機関紙出版センター1500円
著者は日本軍「慰安婦」問題や沖縄戦などを教え続けてきた、大阪府立中学校の社会科教員。子どもや保護者と悩みながら送った日々を綴る。  家族の問題、反抗期の子ども自身の苦悩が暴力として現れてしまうこと、学校で起きた性暴力など、個々の事例に引き込まれていく。かばんを投げつけて窓ガラスを割った生徒を、「どないしたんやろ? 昔はあんなんちゃうかったのに」と、怒りよりも彼のきつい生活を心配する級友と、担任の著者の思い。夜の仕事から帰った母親に生活状況を尋ねようと家庭訪問した著者に、ひたすら謝る母親。これまで学校の対応を拒絶してきた母親が、初対面の著者に堰を切ったように話す姿。著者は子どもだけでなく保護者の心情や生活にも寄り添う。「お母ちゃんを怒らへんでありがとう」という生徒の言葉がそれを示す。  元教員の私も読みながら、自分だったらこう寄り添えただろうかと何度も自問した。(根)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ