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ふぇみんの書評

踊る女と八重桃の花

長谷川春子 著 下平尾直 編

    踊る女と八重桃の花
  • 長谷川春子 著 下平尾直 編
  • 共和国2500円
博識・炯眼にしてピチピチの元気女子…長谷川春子(1895~1967年)のテンポ良い文章に、巻頭から気分が浮き立つ。本業が画家だから、スケッチに添えられた短文は“描く眼”で相手の芯をとらえ、軽快ながら鋭い。川端康成の項では「タネになる程のコクが凝らない」と呆れ、勲章や階級を好むようだからと、スケッチに「大礼服」を着せる。30年後のノーベル賞騒ぎを見越したかと笑ってしまった。  後に戦争翼賛画で名を上げたことで、戦争に協力した美術家として近年幾つかの研究対象となった春子。洒脱な語りに引き込まれながら、戦争を厭わぬ傾向がどこかに潜んでいまいかとついつい探ってしまう。けれど三岸節子や桂ゆきたちも同様だったことを知ると、戦争加担は個人の素養や思考とは異なる力によるとも思え、暗澹とする。  本書は春子の初期の画と文から編まれた。その後の関心がどこに向かったのか興味深い。続刊を期待する。(葉)

私だったかもしれない ある赤軍派女性兵士の25年

江刺昭子 著

  • 私だったかもしれない ある赤軍派女性兵士の25年
  • 江刺昭子 著
  • インパクト出版会2000円
本書は50年前、極寒の山岳ベースで「総括」死させられた連合赤軍、遠山美枝子の25年の生涯を、関係資料と周辺にいた人々の語りでたどるノンフィクションだ。タイトルは同世代の歌人・道浦母都子の短歌「私だったかもしれない永田洋子」に拠る。人物評伝や女性史の著作が多数ある著者は、戦前から続く革命運動の戦列に遠山を加えたかったと執筆動機を語る。  遠山は早くに父親を亡くし、母親が働いて彼女ら姉妹を育てた。働きながら明治大学二部に入学し、ブント・赤軍派で活動。重信房子とは親友だった。当時、女性活動家は主に救対など後方活動を担っていたが、赤軍派でも女性蔑視が顕著で、幹部の妻だった彼女の役目は夫の活動を支えることだった。革命兵士を目指し山岳ベースに入るが、化粧や指輪を永田洋子らに咎められ、殺された。  事件の無残さに目を塞ぎたくなるが、丁寧な取材で、ひたむきな彼女の短い人生と、「あの時代」を浮かび上がらせていく。(晶)

沖縄「格差・差別」を追う ある新聞記者がみた沖縄50年の現実

羽原清雅 著

  • 沖縄「格差・差別」を追う ある新聞記者がみた沖縄50年の現実
  • 羽原清雅 著
  • 書肆侃侃房1600円
選挙や住民投票で地域の意思が何度示されても、日本政府は沖縄を踏みにじってきた。そんな沖縄差別の構造の源流を、歴史をたどって検証した一冊。  1886年、山県有朋は1カ月間沖縄を視察、その報告書には「沖縄は我南門、対馬は我西門」と記され、この時すでに山県の琉球への視線は、住民の意思を無視した基地化にあったことがわかる。山県は、もともと天皇を軸とする専制統率型の国家像を目指し、自由民権運動や国会開設自体を好まなかった。そんな山県が作った軍事体制が、沖縄の基地化、従属的処遇、侮蔑的扱いなどの発想を培い、それは戦後も長く引き継がれ、今の沖縄とその軍事体制に生き続けている。沖縄の基地は米軍に始まったわけではないのだという。  朝日新聞で政治部長を務め、沖縄を長く取材した著者は、そんな山県の作り上げた軍事体制が「今日の『敵基地先制攻撃』『核兵器共有』の姿勢に色濃く残っている」と警鐘を鳴らしている。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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