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ふぇみんの書評

トゥアレグ 自由への帰路

デコート豊崎アリサ 著

    トゥアレグ 自由への帰路
  • デコート豊崎アリサ 著
  • イースト・プレス2200円
東京、仏パリ、サハラを拠点に砂漠の魅力と危機を発信し続けるジャーナリスト。「本物の世界」を見なさいという冒険家の父に育てられ、「砂漠に恋に落ちた」。本書は、サハラの遊牧民トゥアレグへの敬意と親愛にあふれたルポルタージュである。  圧巻は、1998年に著者が自前のラクダで参加したトゥアレグの「塩キャラバン」だ。塩田のあるオアシスを目指し、行く先々で物々交換しながら進む。砂漠の透明な国境線を軽々と越え、循環型経済を営む「塩キャラバン」に、著者はひとつの理想を見た。しかし20年後の今、フランスの原子力会社アレヴァがニジェールにつくったウラン鉱山が砂漠に放射能をまき散らす。日本もウランの輸出先だ。ニジェールではほとんどの人が電気のない生活だというのに。 著者は鉱山に潜入して告発記事を発表し、閉山運動を展開する。  豊富な写真が美しく、遊牧民が著者に向ける信頼のまなざしに心がなごむ。(雪)

そこに私が行ってもいいですか?

イ・グミ 著 神谷丹路 訳

  • そこに私が行ってもいいですか?
  • イ・グミ 著 神谷丹路 訳
  • 里山社2300円
韓国ではヤング・アダルト向け小説として出版された本書。ずしりとした重さに最初は戸惑うが、520頁を読み終えるまで、頁をめくる手が止まらなかった。  日本の植民地下の朝鮮で、対日協力者で成金子爵の娘チェリョンと、田んぼと引き替えに売られチェリョンの小間使いとなったスナムは、ある事件を機に互いを入れ替えて別に生きることに。身分の違いはあれど夢と勇気にあふれる闊達な2人は、恋の葛藤を抱え、日本、中国、米国、ソ連などを果敢に行き来しながら必死に生きようとするが、植民地主義、階級差別、アジア人差別、女性差別のほか、日本軍慰安婦、米国の日系人収容所、抗日武装闘争などの大波に翻弄される―。  耳障りのいい絆や結末はない。嫉妬、狡猾、高慢、羨望…しかし泥臭くも誇り高くあろうとした生き様がある。あなたならどうする?と問われつつ、2人の女性の波瀾万丈の人生を共に生きった清々しさが残った。(張)

黙殺される教師の「性暴力」

南彰 著

  • 黙殺される教師の「性暴力」
  • 南彰 著
  • 朝日新聞出版1600円
新聞記者の著者が、権力報道のあり方を考える契機になったという事件をまとめた。市立小学校に通う軽い知的障がいのある少女が担任の教師から性暴力に遭う。刑事裁判で教師は無罪になり、両親と共に教師と学校と市を提訴。直面する悩み・苦しみを直に読者に共感してほしいと、著者は被害者の母親の語りで本書を書いた。  少女が法廷で被告側弁護士から証人尋問を受ける場面は胸がざわついた。知的障がいの子の証言をどのように公平に受け取り、読み解くのか。精神科医や仲間が家族を支援するが、一方で市や学校は加害教師をかばい、黙殺しようとする。地域や学校で孤立していく家族、娘の暴力被害を聞いて以来一時も休まることがない親の気持ち…。  判決や結末を知ると、市民が泣き寝入りしないためには何が必要なのかと考える。2021年に「教育職員による児童生徒性暴力防止法」が成立したが、被害事実認定の壁は依然厚い。問題を知るためにも読んでほしい。(三)
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