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ふぇみんの書評

真っ赤な口紅をぬって

ペリーヌ・ル・ケレック 著 相川千尋 訳

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  • ペリーヌ・ル・ケレック 著 相川千尋 訳
  • 新泉社1800円
1968年生まれの仏の女性詩人・作家の著者が、DV・性暴力サバイバーの女性たちに聞き取りをし57編の詩にした作品集で、前半はDV、後半は性暴力がテーマ。  詩の言葉は、彼女たちの息遣いや声にならない唸り声のように聞こえ、彼女らの怒り、緊張、恐怖、無力感がひたひたと胸に迫る。抱かされる罪悪感も。「悪いのは私 あとになってわかった 罪悪感 そのいくつもの顔 ぜんぶが私のほうを向いていた」。言葉は司法の無理解や、暴力と同等に打ちのめす共同体や周囲の沈黙にも及ぶ。「すさまじい暴力、すさまじい沈黙」。そして生きようと決意したときの詩「売女みたいな口紅」が放つ光の力強さ。「リップラインを引いて 人生を描きなおす 目に鮮やかに 生き生きと 輝く赤」  #MeTooやフラワーデモなどで、性暴力被害者の声は少しずつ聞かれ始めた。まだまだ圧倒的に聞かれていない彼女たちの声を、まずは静かに抱き取りたい。全てはそこから始まる。(翰)

生殖技術と親になること 不妊治療と出生前検査がもたらす葛藤

柘植あづみ 著

  • 生殖技術と親になること 不妊治療と出生前検査がもたらす葛藤
  • 柘植あづみ 著
  • みすず書房3600円
不妊治療や出生前検査を受けた人々、医師などの話を聞いた経験などから、医療技術が生み出す葛藤を丁寧に考察している。第三者が関わる生殖技術は、「出自を知る権利」の問題にも表れるように、親自身、生まれる子、提供者とその家族に悩みや苦しみが生じる可能性があり、出生前検査では、受ける(た)・受けない(かった)のどちらにも、親には迷いや罪悪感、子には存在への葛藤をもたらすことがある。その苦しみや責任を国や社会が個人(主に女性)に押し付けているのではと著者は問う。  生殖技術は不妊やLGBTQの人にとって希望かもしれないが、当事者以外にも影響が及ぶことがある。出生前検査は「安心のため」と言われるが、不安が煽られ、中絶の選択は非難される。中絶に烙印を押し、中絶方法などは世界から遅れる一方で、不妊治療大国で体外受精などが保険適用となった日本。「産む/産まないが対等に選べる社会を築くことが必要」に同感。これは喫緊の問題だと気づかされる。(ゆ)

国家に捏造される沖縄戦体験 準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀

石原昌家 著

  • 国家に捏造される沖縄戦体験 準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀
  • 石原昌家 著
  • インパクト出版会2800円
5月15日、沖縄復帰50周年記念式典で読谷村出身のテノール歌手、新垣勉さんは「平和を願って」と君が代を歌ったが、評者はその歌唱を複雑な思いで聞いた。沖縄の歴史を知るほどに驚くことがある。この本も読みつつ幾度も自らの無知を恥じた。  著者は長く沖縄の戦場体験の聞き取りを続け、厖大な資料を渉猟してきた。そのなかから「集団自決」とは軍隊に強制された集団死の実態を表すというより、「戦傷病者戦没者遺族等援護法」で沖縄の人々を戦闘参加者に認定するために国が規定した用語だったことが明らかになる。副題にあるように、幼児、それも0歳児までも靖国神社に合祀するための法律であり、援護法の遺族年金を踏み絵にして、遺族の分断をも図る意図が読み取れる。  自衛隊による奄美を含む南西諸島の軍事基地化が進むいま、著者は「戦争前夜」の沖縄から力の限り警鐘を鳴らしている。(公)
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 6カ月4800円、1年9600円
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