WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

新版 ナショナリズムの狭間から 「慰安婦」問題とフェミニズムの課題

山下英愛 著

    新版 ナショナリズムの狭間から 「慰安婦」問題とフェミニズムの課題
  • 山下英愛 著
  • 岩波書店1540円
「慰安婦」問題にはナショナリズムが入りやすい。韓国の「慰安婦」問題解決運動に初期に携わった著者は、性暴力とナショナル・アイデンティティーをめぐる思考を重ね、フェミニズムの視点に立った対話と相互理解を呼びかけてきた。その著書である旧版を少し整理し、日本人「慰安婦」問題、韓国の証言集活動の歴史、サバイバーで活動家である李容洙さんの2020年の記者会見での訴えをめぐる論考を加えたのが本書だ。  韓国の運動が民族言説の縛りを解くこと、日本の運動もナショナルな枠組みを取り払うことが重要で、娼妓出身が多いとされる日本人「慰安婦」の不可視化を問題にし、彼女たちを被害者から除外する限り問題は解決しないとする。「慰安婦」問題は、植民地支配など問題が複雑に絡むが、家父長的・性差別的な社会構造における女性の人権問題であるという意識は絶対に必要だ。日韓の運動をよく知る著者の問題整理は説得力を持ち、解決への課題が見えてくる。(り)

沖縄とセクシュアリティの社会学 ポストコロニアル・フェミニズムから問い直す沖縄戦・米軍基地・観光

玉城福子 著

  • 沖縄とセクシュアリティの社会学 ポストコロニアル・フェミニズムから問い直す沖縄戦・米軍基地・観光
  • 玉城福子 著
  • 人文書院4500円
「慰安婦」問題や米軍の性暴力、売買春の問題に関心を持ってきたフェミニストならば、沖縄におけるこれらの問題を考えるうえで、フェミニズムだけでなくポストコロニアリズムの視点が不可欠だとの指摘に、同意する人が多いだろう。だが、ポストコロニアル・フェミニズムの実践とはどういうことなのか。  著者は、沖縄平和祈念資料館展示改ざん事件や歓楽街浄化運動、性暴力に関する新聞社説等を緻密な手つきで分析し、何が語られていないのかを明らかにしてみせる。画期的と評される2000年「女性国際戦犯法廷」への批判は特に重要だ。もっとも批判的なフェミニストたちさえ抱え込んでいた盲点に気づかされるのは厳しいことだが、これまでの試みがいかに不十分だったのか知ることは希望でもある。ポストコロニアル・フェミニズム研究の可能性を押し広げる若い研究者の登場を喜びたい。(も)

当事者は嘘をつく

小松原織香 著

  • 当事者は嘘をつく
  • 小松原織香 著
  • 筑摩書房1800円
加害者と被害者の対話で問題解決を目指す「修復的司法」の研究者である著者は、自らが性暴力被害者だと本書で明らかにし、「支援者」と決別し、「研究者」を目指す血のにじむような道程を詳らかにすることで「当事者」の新たな語りを拓き、当事者と非当事者の新たな関係の可能性を探る。  被害後壊れそうな著者を支えたのは J・デリダに触発された〈赦し〉。 実際加害者との対話を試みた。しかし研究者らは〈赦し〉を推奨せず、支援者は当事者を「回復すべき人」として矮小化。自助グループで「回復の物語」を得て、常に自分は嘘をついているという強迫観念を抱きつつ、研究に邁進した著者は、次に「非当事者」の「研究者」として水俣へ赴く。そこには修復的司法の長い歴史があり、ある当事者が「あなたにはわからないと言うのは傲慢だ」と言っていた―。  当事者の生の豊かさを示し、当事者・非当事者の関係性の考察は、他の社会運動やあらゆる当事者性を持つ人への示唆になる。(哲)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ