日本を変える女たち 女性政治家インタヴュー集
土田修、水越真紀 著
|
日本を変える女たち 女性政治家インタヴュー集
- 土田修、水越真紀 著
- 発行=Pヴァイン 発売=日販アイ・ピー・エス 1600円
|
|
昨年の衆院選で女性議員が1割を切った。参院選を目前にして、政治に関わる8人の女性へインタビューした本書が生まれた。
特に新人議員が個性豊かだ。吉田はるみさん(衆院・立憲)は経営コンサルタントの経歴から、中小・零細企業に軸足を置き、「分配」が重要と話す。大石あきこさん(衆院・れいわ)は「大阪維新の会」に立ち向かった。組織の中で「男性は上に従いすぎる」「声を上げることで市民の政治力も上がる」。五十嵐えりさん(都議会)は不正義に抗する。いじめから不登校になり、22歳で高卒認定資格に挑んだ人。21年の都議選で当選。自分の経験を信じて政治を行う。
市議当選後デマを流された石嶺香織さん(元宮古島市議)の生活と政治を結びつける言葉に、元都議の三井マリ子さんの「クオータ制」への強い思いも伝わり、共感する。
熱のこもった話に、やっぱり女性議員だよね、生活のすべてが政治、女性候補に投票しよう、と周囲に声をかけたくなった。(三)
わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論
つやちゃん 著
|
- わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論
- つやちゃん 著
- 発行=DU BOOKS 発売=ディスクユニオン 2200円
|
|
マッチョでミソジニーな日本のラップ・ミュージック界における、女性ラッパーのこれまでの功績を明らかにする本書。近年フェミニズム的メッセージのある女性ラッパーもいるが、著者はあえて政治性を引き出すことに注力せず、これまで「空気」として扱われた女性ラッパーが「確かに存在した事実」を「音楽」に注目して記し、ラップ史の中に蘇らせる。
バトルの「ディスり」を嫌い同志にエールを送った先駆者COMA-CHI、体温を刻印したDAOKO、名付けられない感情にリリックを乗せる、ちゃんみな…。COMA-CHIとギャルラッパーvalkneeのインタビューからは、男性社会の中で自分を打ち立て、後ろに続く女たちのためにと動くシスターフッドも垣間見られ、心震える。キャンディーズ(!)から始まるヒップホップディスクガイドも必見。
著者のラップへの深い愛情と女性ラッパーへの敬意がバイブルのような本書を生み、その情熱がラップの真髄へと引き込む。(張)
- あなたのルーツを教えて下さい
- 安田菜津紀 著
- 左右社1800円
|
|
著者は、高校生の時に父が在日コリアンであることを知り、自身のルーツを探る。そして、日本社会の「分断」と向き合い声をあげてきた人たちを、「ルーツ」と共に多くの写真で紹介するのが本書だ。
ロヒンギャがルーツの女性、寿司の修業をするミャンマー人、ラップ、漫画、小説、ダンス、映像などの表現を持つ人たち、人道支援に携わる日独のルーツを持つ青年やシリア人女性。激しいいじめを受けながら、今はジャグラーとして活躍するウトロ生まれの青年。入管で亡くなったウィシュマさんの事件の詳細を伝え、スリランカに家族を訪ねる。川崎・桜本にも一章をさく。
今、日本にはあまりにも理不尽な「線引き」がある。それらを見過ごす人々と下支えする公権力の排他的な姿勢の上に、レイシストたちが“堂々と”差別を続けられる土壌が生み出されていると著者は指摘する。一方、この社会はすでに多様で豊かな色彩を持っているとも書く。その世界を本書から読み取りたい。(ね)