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ふぇみんの書評

奪われた青春 奪われた人生 朝鮮女子勤労挺身隊ハルモニの自叙伝

梁錦徳ほか 著

    奪われた青春 奪われた人生 朝鮮女子勤労挺身隊ハルモニの自叙伝
  • 梁錦徳ほか 著
  • 発行=ハルモニと共にする市民の会 発売=梨の木舎1000円
戦時中に少女たち約1700人が日本企業に朝鮮女子勤労挺身隊として動員されたことは、日韓の徴用工問題が取り沙汰されてからもまだ十分に知られていない。本書は名古屋三菱工場や富山不二越工場に連行された3人の女性の自叙伝だ。勉強が好きだった梁錦徳(ヤンクムドク)さんは小学6年生の時に「日本に行って働けば、お金もたくさん儲けられるし、女学校にも進学できる」と校長や憲兵に騙され、夢を抱いて海を渡った。が、進学どころか過酷な労働、ひもじさ、日本人同僚からの差別に耐える日常だった。解放後、故郷では結婚相手から「慰安婦」と罵られ、家庭崩壊の不幸などが続いた。  すでに多くの勤労挺身隊の女性たちが世を去ったが、無念さは想像も及ばないだろう。当事者と韓日の支援者の尊厳をかけた闘いに敬意を払いつつ、日本政府にハルモニたちの願いである「一日も早い謝罪と賠償」を強く求めたい。(室)

忘却の野に春を想う

姜信子、山内明美 著

  • 忘却の野に春を想う
  • 姜信子、山内明美 著
  • 白水社2200円
東京五輪に「周縁から礫を投じよう」と始まった、作家の姜信子さんと歴史社会学者の山内明美さんの往復書簡。近代とは何か、近代的価値観を覆せるのか、問いを掘り下げる。  大津波後の三陸はそれまでの価値と近代がぶつかり合い、早晩お金でケリをつける社会になっていくと山内は言う。復興後の陸前高田で、ハンセン病療養所という名の閉ざされた人工の街の気配を感じ、「近代の極致ともいうべき風景」と姜は喝破する。  東北や水俣、沖縄、韓国を訪れ、済州島4・3事件、水俣病、ハンセン病、障がい者…テーマは広く深い。時には厳しい問いに、「しんどい時は種をまく。季節の暮らしを始める事、それが人間の骨格をつくる」と山内は言い、「誰の支配も受けない『場』を開きたい」と言う姜は、住まいを移した奈良で語りや芸能の「場」を持ち、天然酵母を育てる。  タイトルは、植民地朝鮮の詩人・李相和の詩「奪われた野にも春は来るのだろうか」による。(ね)

沈黙の扉が開かれたとき 昭和一桁世代女性たちの証言

山村淑子、旭川歴史を学ぶ母の会 編

  • 沈黙の扉が開かれたとき 昭和一桁世代女性たちの証言
  • 山村淑子、旭川歴史を学ぶ母の会 編
  • ドメス出版3000円
東京で教員として勤務後、北海道・旭川へ転居した山村淑子氏は、「戦争で奪われた学ぶ権利を取り戻したい」「女に生まれたということだけで、奪われていた『私』に人生を取り戻したい」との熱意を持つ昭和一桁世代の女性たちと出会い、1978年、共に「旭川歴史を学ぶ母の会」を結成。活動の中で、この女性たちは予想もしない「沈黙の扉」を開くことになる。それは援農や学徒動員など「お国のため」「天皇のため」の行為が間接的に戦争に協力していた、との認識に至ったことであった。  沈黙の扉を開いた女性たちは自らを「普通の人」「当たり前の人」だと語った。だからこそ、戦争では誰もが被害者のみならず加害者になり得る可能性がより説得力を持って訴えかける。自身を省みた時、厳しい歴史観を学び、未経験のアンケート調査などの活動に戸惑いつつ、女性たちは新たな価値観を手に入れ、生まれ変わっていった。その様が本書からは生き生きと伝わってくる。(タ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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