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ふぇみんの書評

日本のフェミニズム 150年の人と思想

井上輝子 著

    日本のフェミニズム 150年の人と思想
  • 井上輝子 著
  • 有斐閣2200円
日本における女性学の創設と発展を担ってきた著者は、昨年8月、惜しまれつつ他界。このため、150年にわたる日本のフェミニズム通史をまとめるという最後の仕事も、ウーマンリブ前夜までで中断することになってしまった。  しかし本書は少しも未完成の感をあたえない。シンプルな言葉で書かれた愛らしい本ながら、大きな流れの見取り図とともに、その流れを作ってきた各時代の女たちのダイナミックな動きをくっきりと描いている。これまでの女性史研究が「偏りがありすぎ、バランスを欠き、意外な事実が発掘されていない」と指摘し、「これは私にしかできない仕事だ」という自負を語る言葉は、決して大げさではない。山川菊栄についての充実した記述、多岐にわたる矯風会の活動を正当に位置づけようとする点など、随所に著者独自の視線が光る。  後半に収録された発言や文章から、リブ以降のフェミニズムへの思いをうかがうにつけ、大きな人を喪ったとあらためて思う。(も)

らんたん

柚木麻子 著

  • らんたん
  • 柚木麻子 著
  • 小学館1800円
恵泉女学園設立者・河井道と、道の元生徒で、右腕として女子教育の確立に邁進した渡辺ゆりとのシスターフッド(否、それ以上!)を軸にした、戦前戦後のフェミニストも総出演の、豪華な大河小説。  元神職の父の没落から北海道へ移住、クリスチャンになり、米国に留学、津田梅子の女子英学塾の教師となる道。生き・学び・羽ばたく喜び=灯を日本女性にシェアしたいと戦後も奔走した。そこに山川菊栄、平塚らいてう、市川房枝らフェミニスト、新渡戸稲造やダメ男の象徴の有島武郎らも登場し、生き生きと痛快な物語が展開される。道とゆりの絆は、ゆりが道も家族にすることを条件に結婚して生涯続いたが、対称的なのが、因習に引き裂かれた、津田梅子と大山捨松、村岡花子と柳原白蓮。この2組の行く末もドラマティック。  天皇制、戦争協力など後世からのさまざまな評価はあるが、「どの女性、一人欠けても、今という時代はありえない」。ぜひ映画か大河ドラマで見てみたい!(一)

私のいない部屋

レベッカ・ソルニット 著 東辻賢治郎 訳

  • 私のいない部屋
  • レベッカ・ソルニット 著 東辻賢治郎 訳
  • 左右社2400円
「マンスプレイニング」という言葉が広がるきっかけとなった『説教したがる男たち』など、フェミニズムの論客として知られる著者。環境・人権・反戦などの運動に参加し、芸術、歴史なども含め幅広いテーマで執筆する。本書はどうして作家になり何を書いてきたのかを綴る自叙伝だ。  19歳の時、DVの父親から逃れるようにサンフランシスコ(米)の黒人街に部屋を借りた。以後、黒人やクィアのコミュニティー、西部の先住民など、マイノリティーの人々と出会う。その豊かな交流を記す一方、女性へのレイプが芸術・文学に描かれ続け、女の能力が削り取られ、声も無視される父権主義社会の中で自身ももがいた、女が強いられる“非在性”を徹底的に書き続ける。経験を物語る場面に読み手も古傷を刺激されるが、フェミニズムは多くのものからの解放で、自分の力や価値に気づく哲学だとあらためて感じる。印象的なエピソード、情緒溢れる文章にも魅せられた。(ゆ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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